【映画評】炎の城 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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約四百年前、王見城の若君、王見正人が明国の留学から帰って来た。正人の留学中に叔父の王見師景は父の王見勝正を謀殺し、王見城の城主となっていた。正人は真相を探るため、狂気を装って入城した……。1960年公開作品。監督は加藤泰で、出演は大川橋蔵、三田佳子、高峰三枝子、大河内傳次郎、黒川弥太郎、薄田研二。
 
ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ハムレット』を基にした時代劇です(原作クレジットはありません)。シェイクスピア演劇を原作とする時代劇と言えば、黒澤明が『マクベス』を『蜘蛛巣城』に、『リア王』を『』にアレンジして監督しています。かつて黒澤監督の『羅生門』で助監督を務めた加藤泰監督としては、意識するところがある企画だったのでしょうか(当時まだ『乱』は存在していませんが)。
 
シェイクスピア演劇も日本の時代劇も、昔の人を演じるコスプレ劇という点で共通しています。それ故、元ネタの演劇性が本作にも強く残っています。「こんなこと言う奴いるかよ」と思ってしまうような大仰な台詞や演技が、舞台演劇だと思えば許容され、時代劇映画である本作でも違和感が少ないのです。
 
加藤監督の演出も引きの画が多く、しかもカメラをあまり移動させないので、舞台演劇のようになります。加藤監督は引きの画が多い一方で、演者のクローズアップも多用する、メリハリの効いた演出をします。この引きと寄りを効果的に用いるスタイルが、本作では活かされています。
 
そんな演劇的空間で印象に残ったのは、師景役を演じた大河内傳次郎です。坊主頭に黒髭を蓄えた風貌は、日本の武将というよりヨーロッパの王様という感じです。その風貌で大河内独特の口調により大仰な台詞を言うと、何やら不思議な威厳が漂い出すのです。シェイクスピア演劇を原作とする時代劇という本作のコンセプトからすれば、大河内が最もハマっていたのではないかと思うのです。
 
★★★☆☆(2018年3月6日(火)テレビ鑑賞)
 
To be or not to be, that is the question.
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