【映画評】秋津温泉 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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岡山県の秋津温泉を舞台に、一組の男女の17年に渡る恋愛を描く。1962年公開作品。監督は吉田喜重で、出演は岡田茉莉子、長門裕之、芳村真理、日高澄子、中村雅子、小夜福子、宇野重吉、東野英治郎、清川虹子、山村聰。
 
本作は岡田茉莉子の百本出演記念映画です。岡田は企画すなわちプロデューサーとしても参加するほどの気合いの入りようです。今時、プロデューサー的役割も兼ねて参加する日本の映画女優は、吉永小百合くらいのものでしょう。
 
相手役の長門裕之は、他の作品で見せるような三枚目的なイメージを消し、シリアスモードで演じています。やるじゃねえか、楠公さんよ!(『池中玄太80キロ』より)。
 
ストーリーだけ拾えば、男と女のメロドラマです。しかし、長期ロケによる美しい自然風景の変化、チョイ役扱いされる豪華な出演者の顔ぶれ、林光の格調高くも悲しげな音楽によって、芸術作品にランクアップしています。ストーリーだけ楽しむならば、小説でも可能であり、映画でしかできない何かを本気で作ろうとしたのが本作なのでしょう。
 
周作(長門)は肺結核を患い、暗鬱とした気持ちで秋津温泉に来ます。自殺を図ろうとするほど荒んだ周作の心は、旅館の娘・新子(岡田)との関係で快復していきますが、東京へ出て都会生活に馴染むことで世俗の垢にまみれ、堕落していきます。一方の新子は、周作を更生させるほど健康的な心の持ち主でしたが、秋津温泉での孤独な生活が彼女の心を徐々に蝕んでいきます。久しぶりに会った周作と交わり、別れた後、新子は自らの命を絶ちます。
 
周作は死から生へ、新子は生から死へと逆のベクトルに向かっていきます。二人の関係が昭和20年前後から始まっているので、その生き様と死に様が戦後日本のメタファーのようでもあります。日本が敗戦のショックから立ち直り、都会で高度経済成長していく反面、田舎の古きものが消滅していった時代を映しているようにも見えるのです。
 
★★★☆☆(2018年2月26日(月)DVD鑑賞)
 
桑田佳祐は、だんだん長門裕之に似てくるのでしょうか?
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