【映画評】愛のメモリー | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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1959年、幸せの絶頂にあったマイケルに突然悲劇が訪れる。最愛の妻子が何者かに誘拐され、その後、ふたりが事故死するという最悪の結末に。それから16年後。妻の面影を忘れることができなかったマイケルの前に、彼女とそっくりの女性サンドラが現れる。ふたりは結婚を約束するが、やがてサンドラが誘拐されるという事件が……画.comより引用)。1976年製作で1978年日本公開作品。監督はブライアン・デ・パルマで、出演はクリフ・ロバートソン、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド、ジョン・リスゴー。
 
松崎しげるの代表曲と同じ邦題ですが、ブライアン・デ・パルマ監督が得意とするサスペンス映画です。『キャリー』と『フューリー』の間に作られ、デ・パルマ監督が勢いづいていた頃の作品です。
 
デ・パルマ監督流演出で、ワンカット長回しやスローモーションを効果的に用いています。冒頭の誘拐事件のシークエンスだけでも、しっかりと魅せるサスペンスになっています。
 
デ・パルマ監督はアルフレッド・ヒッチコックを敬愛しており、同監督のめまい』が本作の元ネタになっています。愛する女を亡くした男の前に、生前の彼女と瓜二つの女が現れるという設定と、その二人の女を一人二役で演じさせる点が同じです。更に人物を中心に周囲をカメラがグルグル回る撮影法と、音楽がバーナード・ハーマンである点まで同じという徹底ぶりです。
 
ところでヒッチコックは、『めまい』において死んだ女の姿をそっくりな女に投影して愛するのを、「屍姦」だと解説していたそうです。確か寺山修司が、映画のフィルムに写された人間は時間が止まった状態で、死者と同じであるということを書いていた記憶があります。これらによりネクロフィル(死体愛)とシネフィル(映画愛)の共通性が導き出されます。
 
本作に話を戻すと、“事件の黒幕”は○○○○に愛情を寄せていたのではないでしょうか。終盤にある空港のシーンで見せる表情が、それを感じさせます。本作の脚本はポール・シュレイダーで、彼が同時期に脚本を書いた『タクシードライバー』において、トラヴィスが愛情を寄せ、救い出そうとしていた対象のことを思えば、その解釈は説得力を増します。
 
本作には、主人公マイケルの「死体愛」、デ・パルマ監督からヒッチコックへの「映画愛」、“事件の黒幕”の愛情と、愛が詰め込まれた映画です(ただし、どれも相手の反応お構いなしの一方的な愛ですが)。その意味では、松崎しげるの代表曲と同じ邦題は、決して的外れではないと言えるでしょう。
 
★★★☆☆(2018年2月14日(水)DVD鑑賞)
 
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