【映画評】PERFECT BLUE | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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アイドルから女優へ転身を果たした主人公が遭遇する、悪夢の日々を描いたサイコ・スリラー・アニメーション(映画.comより引用)。1998年公開作品。監督は今敏で、声の出演は岩男潤子、松本梨香、辻新八、大倉正章。
 
原作の竹内義和、キャラクター原案の江口寿史とアイドルに造詣の深い人物が作り手に参加しています。劇中のアイドルオタクの描写は、かなりリアルなのでしょう(ちなみに、本作は原作と異なるストーリーで、今敏監督は原作未読で作ったそうです。原作者の竹内がそれで了解しているので、問題ないようです)。
 
劇中のアイドルオタクが、日本のサイコ物はイマイチという旨の台詞を言います。しかし、本作は日本映画でありながら、上質なサイコ・スリラーになっています。
 
主人公・未麻(声:岩男潤子)が出演するテレビドラマと彼女の現実が転換しまくる構成によって、観る者は快い混乱に陥ります。しかも、劇中劇であるテレビドラマの内容は、未麻に降りかかる災いの謎解きヒントになっています。その上、終盤でドンデン返しまであり、村井さだゆきの脚本は秀逸な出来です。
 
脚本の巧さだけでなく、アニメだから可能な表現を作品に活かしています。未麻が“もう一人の未麻”を追いかけたり、逆に追いかけられたりするシーンは、実写映画では予算的にも技術的にも難しい表現です。未麻の不安定な精神状態を効果的に視覚化した、今監督の優れた腕前です。
 
その今監督作品に影響を受けたのが、ダーレン・アロノフスキーです。彼の監督作『レクイエム・フォー・ドリーム』と『ブラック・スワン』には、本作へのオマージュとされるシーンがあります。前者についてはアロノフスキー本人が明言しており、後者については女優とバレリーナの違いはあっても、主人公が精神的に追い詰められる設定の共通性もあります。日本製アニメの影響力に改めて驚きます。
 
さて、本作はアイドル業界の内部を生々しく描いています。公開から20年経った現在はどうなったかと言えば、アイドルグループ脱退後に即ヌードになる者がいたり、地下アイドルを標的とするストーカー殺人未遂事件が起こったりと、本作が予言のようであるという現実があるのです。
 
★★★★☆(2018年1月5日(金)DVD鑑賞)
 
劇中劇のモデルは『沙粧妙子-最後の事件-』でしょうかね。
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