【映画評】GONINサーガ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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社会からつまはじきにされた5人組による、暴力団・五誠会系大越組襲撃事件から19年。五誠会は若き3代目の誠司が勢力を拡大し、襲撃事件で殺された大越組の若頭・久松の遺児・勇人は、母の安恵を支えながら、真っ当な人生を歩んでいた。そんなある日、19年前の事件を追うルポライターが安恵のもとに取材に現れたことから、事件関係者たちの運命の歯車がきしみ始める(映画.comより引用)。2015年公開作品。監督は石井隆で、出演は東出昌大、桐谷健太、土屋アンナ、柄本佑、安藤政信、テリー伊藤、井上晴美、りりィ、福島リラ、松本若菜、菅田俊、井坂俊哉、根津甚八、鶴見慎吾、佐藤浩市、竹中直人。
 
傑作バイオレンス映画GONIN』の続編です(『GONIN2』などもありますが、以下『GONIN』を「前作」と呼びます)。前作から19年後という設定であれば、大越組を襲撃した5人組の子供たちを主人公にするところを、襲撃された側の子供たちを主人公にしたことにヒネリがあります。
 
前作と同じ石井隆監督なので、屋外のシーンはほとんど雨降りという独特の演出をしています。更に水槽やシャワーなど、徹底して「水」のイメージを付けています。終盤が屋内のシーンであり、「水」のイメージを付けられないかと思えば……その手がありましたか。
 
また、石井監督はホラー的演出を入れる特徴もあります。本作では、ラスト近くで「死んだ人が見える」という演出があり、前作のファンを喜ばせるでしょう。
 
前作から19年も経っているので、劇中に前作のシーンが挿入されます。そのため、本作は前作との比較を避けられなくなっており、前作の方がカッコいいという残念な結果を生んでいます。
 
そもそも石井監督は女(というか名美)を魅力的(というか魅惑的)に撮り続けてきた人であり、前作は男優をメインキャストにして成功した、彼にとって珍しい作品です。その成功は、今となっては奇跡的なキャストが発する「危険な男の色気」によるものです。本作のキャストは、その点で前作より弱いという欠点があります。
 
本作のミスキャストと言えば、五誠会の2代目を演じるテリー伊藤が最たるものです。作品にとってマイナスにしかなっていません。前作では、五誠会の初代会長を室田日出男が演じており、「時代の変化による極道の弱体化」を体現していると考えれば、適役なのかもしれませんけどね(3代目を安藤政信が演じているので、更にチャラくなります)。
 
変人ヒットマン役の竹中直人も、ミスキャストっぽいです。竹中はライフワークのように、ほとんどの石井作品に出演しており、その時はギャグ無しのシリアスモードで演じることが多いのですが、本作の役は笑いを取りに行っているように見えます。これも作品にとってマイナスに働いているような気がします。前作で死んでいるのですから、本作ではチョイ役のカメオ出演で良かったでしょう(『仁義なき戦い』シリーズの松方弘樹や梅宮辰夫みたいに復活されてもね)。
 
本作の救いは、土屋アンナ、福島リラ、井上晴美の女優陣が魅力的に映っていることです。やはり石井監督は女を撮った方が上手いです。思うに、本作は女優をメインキャストにして作ればよかったでしょう。歴代の名美役女優をキャスティングしながら不発に終わった『GONIN2』のリベンジをすべく、女性版『GONINサーガ』にするべきだったのです(土屋が演じる麻美の秘密を知れば、その思いは強くなります)。
 
★★★☆☆(2017年12月16日(土)DVD鑑賞)
 
土屋アンナは歌声まで披露しちゃうよ。しかも持ち歌の「rose」で。
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