ニューヨークの山の手、ロングアイランドを舞台に、三姉妹の心理の葛藤を中心に、はた目には裕福なファミリーが、崩壊してゆく様を描く(映画.comより引用)。1979年日本公開作品。監督はウディ・アレンで、出演はジェラルディン・ペイジ、E・G・マーシャル、ダイアン・キートン、メアリー・ベス・ハート、クリスティン・グリフィス。
『アニー・ホール』が高評価を得た翌年に、ウディ・アレンが監督した実験的精神溢れる作品です。アレンは『アニー・ホール』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされるほどの演技力なのに、本作には出演していません。それまでの監督作には出演していたのですから、これも実験的です。
その他にも、コメディアン出身のアレンなのに笑いの要素が一切無く、自作のBGMを自ら選曲するほどのジャズ愛好家であるアレンなのにBGMがほとんど無いというのも実験的です。白を基調とした部屋のインテリアも寒々とした印象を与え、アレン作品らしくないシリアスさを演出しています。
両親の不和と三姉妹の葛藤という内容だと、向田邦子の『阿修羅のごとく』みたいなホームドラマを連想してしまいます。アレンと向田の作家性の違いなのか、それともお国柄の違いなのか、本作の三姉妹は『阿修羅のごとく』の四姉妹より自己主張がはっきりしています。
三姉妹(ダイアン・キートン、メアリー・ベス・ハート、クリスティン・グリフィス)はそれぞれ女流詩人、作家、テレビ女優という才能を必要とする職業を選びます。母イヴ(ジェラルディン・ペイジ)が才能あるインテリア・デザイナーであることから、母と異なる才能によって自立を図ろうとしますが、三人とも上手くいきません。才能の無さを社会から思い知らされます。結局イヴは心を病み、悲しい人生の末路をたどります。
才能、特に芸術的才能は人生において役に立たないというシニカルな視点は、アレンらしいと思います(しかも自分が『アニー・ホール』で世間に才能を認められた後ですから、かなりのひねくれ者です)。
★★☆☆☆(2017年9月23日(土)DVD鑑賞)
アレンはアカデミー賞ノミネート常連ですが、授賞式にはほとんど出席しません。