【映画評】やくざ観音・情女仁義 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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青年僧が初めて知った異性が実の異母妹だったことから、悪の道へ進み、血に飢えた狼の如く変身していきながらも妹を追い求めていくさまを描く(映画.comより引用)。1973年公開のにっかつロマンポルノ作品。監督は神代辰巳で、出演は岡崎二朗、安田のぞみ、松山照夫、絵沢萠子、坂本長利、高橋明。
 
ポルノ映画というより、ヤクザ映画です。題名に「仁義」の文字が用いられているのは、同年公開されてヒットした『仁義なき戦い』に便乗したからでしょうけど、同作とは異なる魅力を放っています。
 
神代辰巳監督は、本作より前の『女地獄 森は濡れた』においてインモラルな暴力描写に挑戦しており、本作においても暴力描写がたくさん出てきます(ヤクザ映画ですから)。鮮血を流すシーンが多く、これと主人公の人生にとって節目となる場所が川であることから、本作は血脈や因果を描いた物語であることが暗示されています。神代監督と脚本の田中陽造は、本作より後の『地獄』でもドロドロとした血脈や因果のドラマを描いています。
 
惜しいのは、主人公を演じる岡崎二朗に華が足りないことと、異母妹役の安田のぞみが新人の故に演技がそれほど上手くないことです。そこを改善し、もっとお金をかけて作れば、当時の東映実録ヤクザ映画に勝るものができたでしょうが、ロマンポルノだからこそ可能だった表現の自由さもあるので、難しいところです。
 
ところで、本作の絵沢萠子が熟女キャラクターで登場しますが、彼女は当時34歳で、現在の柴咲コウや池脇千鶴より年下だったことになります。「成熟」という価値観の変化を考えされられる事実です。
 
さて、本作は設定を海外に置き換えれば、全く見方が変わってくると思います。ギャングの血を引く修道士が教会を破門され、聖母マリアのタトゥー(本作では菩薩の刺青)を背負って、悪の道に堕ちていくというストーリーで、マーティン・スコセッシあたりに監督させたら、世間から高評価されそうな映画になりそうです。すなわち、本作の物語の核に当たる部分は悪くないどころか、優れていると思うのです。日本映画で、しかもポルノ映画だから低評価されているのでしょうね。
 
★★★☆☆(2017年9月9日(土)DVD鑑賞)
 
神代辰巳作品なので、BGMに民謡が使われています。
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