【映画評】テラフォーマーズ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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2599年、人口増加による貧富の差が激しくなる日本では、新たな居住地開拓のために「火星地球化(テラフォーミング)計画」が始まっていた。しかし、火星の気温を上げるためにコケとともに放たれたゴキブリが異常進化してしまう。そのゴキブリたちを駆除するため、15人の日本人が火星に送り込まれるが……(映画.comより引用)。2016年公開作品。監督は三池崇史で、出演は伊藤英明、武井咲、山下智久、山田孝之、ケイン・コスギ、菊地凛子、加藤雅也、小池栄子、篠田麻里子、滝藤賢一、太田莉菜、福島リラ、小栗旬。
 
人気コミックの実写映画化で、三池崇史監督の「原作クラッシャー」ぶりを世に知らしめた作品です。
 
冒頭の地球の描写は、もろに『ブレードランナー』です。ビルの広告が「強力わかもと」から「ヒサヤ大黒堂」に変わっていますが。更に中盤に出てくるテラフォーマーの卵のビジュアルは、もろに『エイリアン』です。三池監督のリドリー・スコットへのオマージュではありません。みんなが知っている有名SF映画だから、手っ取り早くパクったのです。上映時間や観客のレベルを考えれば、分かりやすい方が良いに決まっています。
 
地球外の惑星で人間と虫が戦うという設定は、三池監督が好きな『スターシップ・トゥルーパーズ』と同じです。同作には、ポール・ヴァーホーヴェン監督の痛烈なファシズム批判が込められていました。本作では、蛭間(山田孝之)の境遇に格差社会批判があるものの、ヴァーホーヴェン監督ほどの毒気はありません。辛口な政治批判などしたら、出資者が逃げて映画を作れなくなりますからね(園子温は、原発批判映画『希望の国』の企画を出したら、それまで寄ってきた日本の出資者が一斉に撤退したので、海外の出資者を見つけて作品を完成させました。それが日本の文化状況です)。
 
『スターシップ・トゥルーパーズ』との共通点として、グロ描写も挙げられます。しかし、それも同作には及びません。そうは言っても、人間もテラフォーマーも首を切られたり、手足をもがれたりします。それでも本作がR指定されないのは、殺されるのが人間ではなく、昆虫化した人間やテラフォーマーだからでしょうね。TVゲームで殺されるのが生きた人間ではなく、ゾンビであれば全年齢対象となるのと同じ理屈です。映倫の基準が理解できません(三池監督は、『ビジターQ』や『殺し屋1』など映倫に喧嘩を売るような作品を撮ってきた男です)。
 
上映時間、観客のレベル、出資者、映倫など様々な規制に縛られた状態で、ヒットが見込まれる全国公開作品を作るのは、かなり難しい仕事です。原作どおりに作れば、何らかの規制に引っ掛かり、原作どおりに作らなければ、「原作レイプ」や「原作クラッシャー」と叩かれますから。規制の中には、原作ファンも含まれますね。
 
規制に縛られながらも、三池監督は自分の個性を出しています。アクションシーンのカンフーテイストや、人間側にヤクザを入れて、わざわざ刺青を見せるシーンが。それです。三池監督はブルース・リーが好きで、またVシネマ時代はヤクザ映画ばかり作っていましたから。
 
終盤に、人間である小町(伊藤英明)が怒り極まり、素手でテラフォーマーを殴り倒すシーンは、矛盾にツッコミを入れるところではなく、三池映画では当たり前のことです。『DEAD OR ALIVE 犯罪者』の衝撃的なラストで分かるように、男気があれば何でもできるのです(映画の中だけならね)。殴られたテラフォーマーに小町の男気が伝わったのは、昔の不良漫画のような展開でグッと来ます。
 
思うに、三池監督が原作ファンにバッシングされるのは、双方の世界観に違いがあるからではないでしょうか。三池監督の世界観は、1970年代の不良系少年漫画的な男気の世界です。それゆえ『クローズZERO』二部作のようなヤンキー物だとハマります(Vシネマ時代から梶原一騎原作物も何本か監督しています)。それに対し、『テラフォーマーズ』や『ジョジョの奇妙な冒険』の原作ファンの多くは、1990年代以降のオタク的感性の持ち主だと思うのです。ヤンキーとオタクという水と油のように相容れない「人種」の対立が、三池バッシングの一因だと推理できるものの、どちらかと言えばオタク的な私が本作など三池作品を面白がるのですから、あまり説得力は無さそうです。
 
★★★☆☆(2017年8月26日(土)インターネット配信動画で鑑賞)
 
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