
南北戦争の遠因にもなった過激な奴隷解放運動家ジョン・ブラウンと、彼に対抗するカンサス騎兵隊員の戦いを描く(Yahoo!映画より引用)。1940年製作で、1948年日本公開作品。監督はマイケル・カーティスで、出演はエロール・フリン、オリヴィア・デ・ハヴィランド、レイモンド・マッセイ、ロナルド・レーガン、ヴァン・ヘフリン。
今の日本だと名前の響きにゲス感のある、エロール・フリンが主演しています。DVDの解説で、淀川長治がフリンとの思い出を語っていました。フリンは淀長さんが惚れる美男子ということです(意味を深堀りしないこと)。
ロナルド・レーガンも出演しています。市長(クリント・イーストウッド)や州知事(アーノルド・シュワルツェネッガー)になった俳優はいても、一国の大統領にまで上り詰めたのはレーガンだけです。本作での演技は大して記憶に残りませんでしたけどね。
本作の後に『カサブランカ』を監督したマイケル・カーティスは、人間ドラマやアクションシーンをバランス良く構成し、飽きの来ない娯楽作品に仕上げています。職人ですね。
本作と同じ時代設定の映画に『風と共に去りぬ』があります。同作にも本作のオリヴィア・デ・ハヴィランドが出演しています。近年のクエンティン・タランティーノ作品である『ジャンゴ 繋がれざる者』と『ヘイトフル・エイト』は、本作とほぼ同じ時代設定です。これらの作品と関連する、南軍のロバート・エドワード・リー将軍の銅像撤去に対する抗議が、最近の白人至上主義者団体KKKとそのカウンターとの衝突の原因であったことから、アメリカ人は南北戦争時代の出来事を遠い昔のことと感じていないと言えます。
本作の悪役であるジョン・ブラウン(レイモンド・マッセイ)は、黒人奴隷制度廃止論者でありながら、過激な暴力を手段としたことで国家の敵となります。後の公民権運動におけるマルコムXに近いものがあります。この「目的は正しいが、手段を間違っている者」に共感しながらも、ジェブ(フリン)たち騎兵隊はブラウン一味を討伐する任務を遂行します。後世の人間が見ても、複雑な関係です。
本作で描かれた複雑な戦いの果てに達成した黒人奴隷制度廃止や、後の時代の公民権運動を通じて、多くの命を犠牲にしてでもアメリカという国が選んだのは「(有色人種を)差別しない」という価値観です。その価値観への侵害者たちとの戦いに対し、国のトップである大統領が「どっちもどっち」論で治めようとしたら、非難轟々になるのは当たり前な気がします。
★★★☆☆(2017年7月29日(土)DVD鑑賞)
西部劇を観ればアメリカという国を理解できるかも。