
悪徳の限りを尽くす荒くれ医者が主人公のピカレスク時代劇。1963年公開作品。監督は森一生で、出演は勝新太郎、藤村志保、福田公子、万里昌代、中村鴈治郎、天知茂。
勝新太郎が主人公の長庵を演じます。当時の勝新は、『悪名』シリーズや『座頭市』シリーズでダーティーヒーローを演じていましたが、本作はヒーローではなく、ただひたすらに悪人を演じています。勝新が役者としてキャラクター変更をする転機となった『不知火檢校』の目明き版という見方もできます(監督は同じ森一生ですから)。
町医者良伯(中村鴈治郎)の見習いであった長蔵(勝新)は、手始めに猫を毒殺し、その肉で作った猫汁を猪汁と騙して良伯に食べさせます。この時点で猫好きの観客からは超極悪人としか思われないでしょう(この猫毒殺のエピソードは伏線です)。
更に長蔵は良伯の養女お加代(万里昌代)を犯し、それをネタに良伯を強請るという非道ぶりを発揮します。一度江戸の町から消えた長蔵は、長庵と名を変え、町医者として江戸に帰ってきます。改心したのかと思いきや、その極悪ぶりはパワーアップしています。自分の犯した殺人の罪を貧乏浪人の道十郎(天知茂)に被せるという高等テクニックまで身に付けているほどになりました。
そのまま長庵をのさばらせるほど、映画の神様は甘くありません。結局、長庵は因果応報とばかりに破滅していきます。並みの役者が長庵役を演じれば、観客が感情移入できない、ただの不快な人物で終わってしまいます。しかし、勝新が演じた場合、どこか魅力的な人物に映ります。そこが勝新の天才役者たる所以だと思うのです。
★★★☆☆(2017年6月28日(水)DVD鑑賞)
元たけし軍団で負古太郎という芸人がいます。