
SFと怪奇映画とロックン・ロールに捧げられたオリジナル・ロックン・ロール・ミュージカル(映画.comより引用)。1976年日本公開作品。監督はジム・シャーマンで、出演はティム・カリー、スーザン・サランドン、バリー・ボストウィック、リチャード・オブライエン、パトリシア・クイン、リトル・ネル。
フランク・フルター博士(ティム・カリー)を筆頭に変なキャラクターしか出てこないミュージカル映画です。後に『テルマ&ルイーズ』や『デッドマン・ウォーキング』などで高い評価を得る、スーザン・サランドンは大半の出演シーンを下着姿で演じます。個人的には、リトル・ネルが演じるコロンビアが可愛いですね。日本だったら、鈴木蘭々や木村カエラあたりに演じてほしい役です(赤髪のショートヘアが似合い、歌は上手いからです)。
オープニングテーマ("Science Fiction, Double Feature")の歌詞や、劇中に狂言回しの犯罪学者(チャールズ・グレイ)が介入してくることから、往年の怪奇映画への敬意が感じられます。フルター博士が究極の人造人間ロッキー(ピーター・ハインウッド)を創造するという話は、明らかに『フランケンシュタイン』のオマージュです。LGBT(レスビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の要素もある点では、『悪魔のはらわた』にも似ています。
本作公開時は、LGBT、奇抜な衣装や美術、カニバリズム(人肉食)描写などが当時の良識派に受け入れらなかったそうです。しかし、時代が変わるに連れて、熱狂的なファンを生み、伝説のカルトムービーになったという経緯があります。
日本で似たものを探すと、WAHAHA本舗の舞台でしょうか。奇抜な衣装を着ており、良識派が眉をひそめる下ネタもありますから。本作は観客が場面に合わせてツッコミを入れたり、紙吹雪を撒いたりする「観客参加型」映画として有名ですが、WAHAHA本舗では梅垣義明が客席に降りて鼻に詰めた豆を飛ばして回るネタがあるので、やはり「観客参加型」です。更にWAHAHA本舗の全作品で作・演出を手掛ける喰始はゲイであることをカミングアウトしているので、LGBTの要素まで共通しています。そもそも喰は新宿二丁目のゲイショーの演出から影響を受けたことを認めており、そのゲイショーが本作や海外のゲイショーを模倣したのでしょうから、似ているのは当然のことかもしれません。
見た目は馬鹿馬鹿しい作品ですが、台詞をじっくり聞くと、深みのあることを言っています。「夢を見るだけじゃダメ。夢になるのよ」というのは、すごく良い言葉です。しかし、その言葉を女装した変人(フルター博士)の口から聞くとは思いもよりませんでした。
★★★☆☆(2017年4月7日(金)DVD鑑賞)
日本の舞台版だとフルター博士役を古田新太が演じました(ダジャレ?)。