
失われたもうひとつの自己を求め、苦悩し彷徨するひとりの女性の姿を描く(映画.comより引用)。1989年日本公開作品。監督はウディ・アレンで、出演はジーナ・ローランズ、ミア・ファロー、イアン・ホルム、ジーン・ハックマン。
ジーナ・ローランズは、夫であるジョン・カサヴェテスが監督した『グロリア』が代表作です(同作はリュック・ベッソン監督の『レオン』の元ネタでもあります)。他のカサヴェテス監督作品では、『こわれゆく女』や『オープニング・ナイト』にも出演してます。これらの作品において、ローランズは精神的に追い詰められる役を演じており、その演技が本作の起用理由ではないかと思います。
またローランズの夫であるカサヴェテスと、ウディ・アレンの妻であるミア・ファローがロマン・ポランスキー監督の『ローズマリーの赤ちゃん』で共演しているという縁も起用理由の一つでしょう。カサヴェテスとアレンは同じニューヨーク出身なので、どこかで接点があったとしても不思議ではありません。
アレン作品にしては笑いの要素がなく、人間は孤独であるというシニカルな結末が用意されています。主人公の心理状態を表現するのに、檻に囚われた獣や仮面という単純で分かりやすいシンボルを用いているのは、アレン監督にしては捻りが足りない気がします。
苦悩する主人公(ローランズ)の主観的視点から描かれるので、現実と夢の境界が曖昧になっています。アパートの隣室にある精神科医の部屋から漏れ聞こえる、患者(ファロー)の告白が主人公の思考や行動に影響を与えます。しかし、その告白が患者ではなく主人公の心の声だったら、それどころか患者は実在していなかったらと考えると、本作はサイコ・ホラーの空気を放ち出すのです。
★★☆☆☆(2017年2月23日(木)DVD鑑賞)
ジーン・ハックマンが割と優しい男を演じているのは珍しいです。