【映画評】バージニア・ウルフなんかこわくない | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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ニューイングランドの大学内に建てられた住宅。そこに住む教授夫妻ジョージとマーサのもとに、若い夫婦がやってくる。マーサが青年をベッドに誘おうとしても、ジョージは文句を言わない。すでに二人の間には、愛のかけらもなかったのだ。そして唯一の絆である、彼らの息子のことが語られたとき……。壊れかけた夫婦の、狂気に彩られた関係を描く(Yahoo!映画より引用)。1967年日本公開作品。監督はマイク・ニコルズで、出演はエリザベス・テイラー、リチャード・バートン、ジョージ・シーガル、サンディ・デニス。
 
酔っぱらい毒舌中年夫婦の下に招かれた若夫婦が味わう恐怖の一夜。こう書くと、サスペンスかホラーのような内容に思われます。しかし、全体的に緊張感があり、一部にサスペンス演出もあるので、怖い話です。
 
結婚23年目の妻マーサ役のエリザベス・テイラーは、撮影当時の実年齢(33歳)より、かなり年上の役を演じていることになります。確かに荒んだ生活を送っている熟女に見えるので、しっかり役作りをしたのでしょう。子役からスター女優に上り詰めたテイラーなので、プロ意識が高いです。
 
マーサの夫ジョージ役のリチャード・バートンは、撮影当時テイラーと実生活でも夫婦でした。結婚2年目くらいなので、まだ夫婦仲は良かった頃です。その二人が感情をぶつけ合うハードな口論を演じています。これまたプロ意識の高さを感じさせます。
 
オリジナルが舞台劇なので、作品の大半が台詞の応酬で占められます。しかも結構汚い言葉を互いに吐きかけ合います。その言葉の弾丸が二組の夫婦の嘘を暴き、夫婦の真実を剥き出しにする結末です。鑑賞後は疲れを感じます。
 
マイク・ニコルズは、元々舞台版の演出家でしたが、本作で映画監督デビューを果たしました。そして本作の後、ダスティン・ホフマン主演の『卒業』を監督し、高評価を得ました。本作はアメリカ白人夫婦が汚い言葉を吐き、秘密の闇をさらけ出す話で、『卒業』はロビンソン夫人がベンジャミンを“若いツバメ”にする(ゲス不倫する)話です。これらはアメリカの理想的な夫婦像に対して異議を唱えているかのようです(本作のマーサも若夫婦の夫ニックをベッドに引きずり込みます)。この社会通念への反発というべき姿勢は、ニコルズがドイツ・ベルリン生まれのユダヤ人で、ナチスドイツのユダヤ人迫害から逃れるため、家族でアメリカに亡命したという少年期の体験がベースにあるとするのは考え過ぎでしょうかね。
 
★★★☆☆(2017年1月13日(金)DVD鑑賞)
 
マイク・ニコルズの遺作『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』では、“アメリカの正義”を皮肉っています。
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