
ニューヨークに住む2組の夫婦の愛の崩壊と再生を描く人間ドラマ(映画.comより引用)。1993年日本公開作品。監督と主演はウディ・アレンで、出演はミア・ファロー、ジュディ・デイヴィス、シドニー・ポラック、ジュリエット・ルイス、リーアム・ニーソン。
まだ今ほど知られていなかった頃のリーアム・ニーソンが出演しています。最近はアクション映画への出演が多いので、ウディ・アレン作品に出ていたのを意外に感じます。
撮影当時、十代だったジュリエット・ルイスも出演しています。アレンが演じる大学教授ゲイブと恋に落ちる女子学生レイン役を演じています。本作の前に『ケープ・フィアー』でロバート・デ・ニーロ演じる復讐鬼に誘惑される女子高生役を演じており、当時のルイスは、「大物狙いフケ専小悪魔女優」という感じです。ちなみにルイスはブラッド・ピットの元カノです。ブラピの元カノはグウィネス・パルトロー、ジェニファー・アニストン、アンジェリーナ・ジョリーと、なかなかの顔ぶれです。
本作は夫婦の危機を描いた作品ですが、アレンと当時彼のパートナーだったミア・ファローも現実に私生活がギクシャクしていた時期に制作されました。本作の次回作『マンハッタン殺人ミステリー』では、ファローで脚本をアテ書きしていたのに、仲がギクシャクし過ぎて、ダイアン・キートンを代役に立てたほどです(キートンはアレンの元カノですが)。
2組の夫婦はインテリ層のカップルなので、自分の行いを言葉で正当化しようとします。しかし、彼らも根本的にはわがままなゲス人間です。ジャック(シドニー・ポラック)は頭の悪そうな若い愛人にハマります。彼女は星占いに凝っており、ジャックらインテリ層が参加するパーティーで、その知識を披露します。すると、ジャックは強引に愛人を連れて退場します。星占いなんて非論理的なオカルトを知的なインテリ層に晒すのは恥ずべきことだからです。しかし、ジャックの妻サリー(ジュディ・デイヴィス)は、人間をハリネズミ型とキツネ型に分類し、それぞれの型に身近な友人を当てはめて分析するのを得意げに語ります。星占いとサリーの分析は、人間を勝手に分類して性格を決め付ける点で変わりません。前者はオカルトと批判されるのに対し、後者は「科学」を偽装することで批判を回避しているだけです。インテリも非インテリもやることは同じなのです。
劇中でレインが言うことには、熟年が若い恋人を得ようとするのは、若者が「失った夢と青春の象徴」だからだそうです。人間は老いていくのが自然であり、それに反するかのように失ったものを取り戻そうとするのは、エゴイスティックな振る舞いです。熟年が失った夢と青春を取り戻している間、それに付き合っている若者は夢と青春を消費しているのですから。熟年の利己心が若者に残酷な結果をもたらすかもしれません。
本作はちょっと変わった演出をしています。手持ちカメラによる撮影で、画面のブレ、ピントの合わないショット、急激なズームが多用されています。また、会話シーンに明らかな編集上の省略があり、物語の途中に登場人物のインタビューが挿入されます。これらは、テレビのドキュメンタリー番組でよく見られるものです。一般人である2組の夫婦の私生活をテレビで追跡レポートしているように描くのは、有名人であるアレンの私生活を追い回すゴシップ大好きマスコミへの皮肉のようにも受け取れます。
本作は何気ない台詞が伏線になっていたり、登場人物の描き方にアレンのファローに対する本音が込められているように深読みできたりと、アレン作品の中で秀でた作品です。そのような作品を作った背景に、アレンの私生活上のギクシャクがあるので、才人は私的感情を優れた作品に昇華できるものだと思うのです。
★★★★☆(2016年12月24日(土)DVD鑑賞)
アレンはファローとの破局後、彼女の養子である韓国人女性スン・イーと結婚しています。