【映画評】ホワイトハンター ブラックハート | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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アフリカ象のハンティングに強迫的に魅せられてゆく1人の映画監督の姿を描くドラマ(映画.comより引用)。1990年日本公開作品。監督・主演はクリント・イーストウッドで、出演はジェフ・フェイ、ジョージ・ズンザ、アルン・アームストロング、マリサ・ベレンソン。
 
アフリカの女王』撮影時のジョン・ヒューストン監督をモデルにした話です。アフリカの野生動物がたくさん映るので、動物好きには、そこも見所になります。アフリカ象も登場しますが、どうやって芝居をつけたのか気になります。思い返せば、同じイーストウッド主演の『ダーティファイター』のオランウータンも、どうやって演技を仕込んだか気になりました。イーストウッド組のスタッフには、ムツゴロウ(畑正憲)的才能でもあるのでしょうか(「クリントとゆかいな仲間たち」?)
 
イーストウッドは、主人公ジョン・ウィルソン(≒ジョン・ヒューストン)に自己投影するかのように共感しています。ジョンが脚本家ピート・ヴェリル(ジェフ・フェイ)と映画脚本の打ち合わせをしている場面で、ジョンは脚本に「慈悲のなさ」や「簡潔さ」を求めます。「慈悲のなさ」と「簡潔さ」は、イーストウッド監督作品にも見られる特徴です。
 
また、公然とユダヤ人差別をする婦人をたしなめたり、黒人差別をする白人ホテルボーイに喧嘩を売ったりするジョンには、やはりイーストウッドの精神が投影されています。イーストウッドは、『許されざる者』、『ミリオンダラー・ベイビー』、『インビクタス/負けざる者たち』で黒人のモーガン・フリーマンと、『硫黄島からの手紙』で渡辺謙ら日本人キャストと仕事をしているので、人種差別主義者ではないからです。
 
イーストウッドを俳優として出世させたのは、マカロニ・ウエスタン『荒野の用心棒』であり、当時イタリア人スタッフに囲まれて仕事をしている中で、イーストウッドは人種や民族で差別することは無意味だと知ったのかもしれません。余談ですが、共和党支持者のイーストウッドは、他の人種や民族に対して過激な発言をするドナルド・トランプ新大統領をどう思っているのでしょうね。
 
ジョンは映画を作るためにアフリカまで来たにもかかわらず、象狩りに夢中になります。自分の理想の映画を作るため、ハリウッドという大きな力に立ち向かうジョンには、巨大な象がハリウッドと同化して見えたのかもしれません。映画作りにおいて、映画監督は神のような存在と信じるジョンには、ハリウッドも象も倒せるという過信もあったのでしょう。結果的にジョンは象を倒せず、自分のエゴのせいで他人の命まで失ってしまいます。ショックで虚脱感に襲われたジョンは、映画作りの現場に帰ります。ジョンが神的存在になれるのは、そこしかないからです。
 
本作は、イーストウッドが映画監督という仕事を冷徹な視点から、自省の念を込めるかのように描いた作品です。
 
★★★★☆(2016年11月28日(月)DVD鑑賞)
 
『アフリカの女王』を観ておくと、本作をより楽しむことができます。
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