
バイト先で知り合った彼女タミ・リンと結婚したテッドは、子どもが欲しいと思うようになるが、子作りのために自分が人間であるということを証明しなければならなくなる。困ったテッドは美人弁護士サマンサにを雇い、法廷に乗り込むのだが……(映画.comより引用)。2015年日本公開作品。監督とテッドの声はセス・マクファーレンで、出演はマーク・ウォールバーグ、アマンダ・セイフライド、ジョヴァンニ・リビシ、ジョン・スラッテリー、ジェシカ・バース、モーガン・フリーマン。
見た目はモフモフして可愛いけれど、中身は毒舌で下品なおっさんというテッド(セス・マクファーレン)が起こす騒動を描いたコメディ映画の続編です。前作『テッド』の続編は、ジョン(マーク・ウォールバーグ)とロリー(ミラ・クニス)の間に子供が出来て、テッドとライバル関係になると私なりに予想していたのですが、しっかりと外しました。冒頭でジョンとロリーは離婚していますからね。
マーク・ウォールバーグがテッドに劣らずダメな中年男ジョンを熱演しています。『ザ・ファイター』や『ローン・サバイバー』でシリアスな演技を見せたウォールバーグが、精子バンクの事故で精液まみれになっている姿をテッドに撮影され、SNSにアップされるという面白いことになります。
新人弁護士サマンサを演じるアマンダ・セイフライドも、なかなか面白い目に遭います。男性器型のパイプで大麻吸引したり、テッドに「ゴラム顔」(『ロード・オブ・ザ・リング』より)とバカにされたりします(確かにセイフライドは「ゴラム顔」ですけど)。フォローのつもりなのか、劇中でサマンサが歌声を披露するシーンがあり、『マンマ・ミーア!』や『レ・ミゼラブル』で見せたミュージカル女優としての顔もアピールしています。
人間ではなく「所有物」とされたテッドが、人間として認めてもらうがために奮闘する物語は、マイノリティーの人権というシリアスな問題を戯画化したものです。前作と同じでは飽きられると判断し、異なる要素を取り入れたのは賢明です(それでもバカで下品なノリは保っています)。
マイノリティーの中でも、黒人の人権問題をモデルにしたと思われます。テッドに理解を示し、大きな力となる人権派弁護士(モーガン・フリーマン)は黒人ですから。本作以前に『ジャンゴ 繋がれざる者』、『大統領の執事の涙』、『それでも夜は明ける』など、アメリカにおける黒人差別の歴史を題材とした作品が話題となりました。これらの作品は、バラク・オバマがアメリカ初の黒人大統領となったことが、企画立ち上げの契機になったのでしょう。本作は、そうした社会的風潮に乗っかりながら、笑えるコメディ作品に仕上げているのが優れたところです。
ところで、来年ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任することによって、アメリカ映画界に何らかの変化が生じるのでしょうか。シリアスなドラマだけでなく、バカバカしいコメディにもトランプ的思想が影響するのでしょうか。もし『テッド3』が作られても、笑えないコメディにはなってほしくないです。
★★★★☆(2016年11月22日(火)DVD鑑賞)
難しく鑑賞せず、リラックスして毒舌や下ネタで笑いましょう。