
科学者ヘンリー・フランケンシュタインが死刑囚の死骸を墓場から掘り出して、嵐の夜電撃によって再生させた「怪人」は、群衆に追い詰められて山頂の風車小屋に逃げ込んだが、火を放たれてついに焼死した……と思われたのであった。ところが悪運強い「怪人」は猛火に包まれたが、床下の水穴に落ちて助かったのである(映画.comより引用)。1935年日本公開作品。監督はジェームズ・ホエールで、出演はボリス・カーロフ、コリン・クライヴ、エルザ・ランチェスター、アーネスト・セジガー、ヴァレリー・ホブソン。
『フランケンシュタイン』の続編となる怪奇映画です。冒頭でシェリー夫妻とバイロンが登場し、原作者のメアリー・シェリー(ランチェスター)が前作の続きを語る形で物語が始まります。現実と虚構の二重構造を成す、面白い演出です。しかし、物語のラストに彼女たちの再登場はないので、何か釈然としないものがあります。
怪物(カーロフ)が片言の言語を話すので、少しコメディ寄りになったような印象を受けます。しかし、怪物が言葉を覚えることと、怪物が伴侶を欲することは、むしろ原作に忠実です。藤子不二雄の漫画『怪物くん』に出てくるフランケンのように「フンガー」しか言わないのではなく、ケネス・ブラナー監督版『フランケンシュタイン』でロバート・デ・ニーロが演じた怪物のように、高度な知能を持ち、博士を脅かす存在になるのが、本当の姿です。
前作での失敗に懲りて、真っ当な道を歩もうとするフランケンシュタイン博士(クライヴ)を、再び狂気の世界に引きずり込むプレトリアス博士(セジガー)のマッド・サイエンティストぶりが強烈です。何しろホムンクルス(小人の人造人間)まで作り出すほどの怪しさです。研究所に自爆装置を作り、それをわざわざ見え易い所に取り付けるのも狂っている証しです(映画上の御都合主義とは言わないこと)。
怪物の花嫁(ランチェスター。シェリー夫人と一人二役)は、映画史に残るビジュアルです。怪奇映画へのオマージュに溢れた、ティム・バートン監督の『フランケンウィニー』にも、同じ髪型の犬が出てきます。奇天烈なビジュアルながら美しい(しかも自分と同類のはずの)花嫁に拒絶されることで、誰からも愛されない怪物の孤独感が爆発し、自暴自棄になる様子は、非常に切ないものがあります。
★★★☆☆(2016年9月24日(土)DVD鑑賞)
今だったら怪物役はピエール瀧とかサンドウィッチマン富澤あたりに……。