
昔々ある村に、蔵六という青年がいた。心優しい蔵六を妹の春子は大好きだった。しかし、蔵六はある日突然体中が膿み、変形していく奇病に侵される。そんな蔵六を父の六太郎と母の志づは、村人に見つかるまいと家の中に閉じ込める(映画.comより引用)。2004年公開作品。監督は熊切和嘉で、出演は森下サトシ、川口真理恵、三浦誠己、東千晃、黒沼弘己、奥村公延。
日野日出志の怪奇漫画を原作としていますが、「田舎で奇病」という設定だけを借用し、ストーリーは大幅に変更されています。だから、蔵六が体から出る七色の膿で絵を書くとか、ラストの「変身」とかはありません。
ホラー映画ですが、あまり怖くありません。熊切監督はデビュー作『鬼畜大宴会』で狂気のグロ描写を見せつけたのに、本作ではその才能を発揮していません。別の才能である「田舎を上手く撮ること」が発揮されたのか、本作の田園風景は美しいです。
蔵六の奇病は癩病(ハンセン病)のメタファーであり、その扱われ方は現代における障害者や認知症老人への差別や、彼らを抱える家族の苦悩にも通じ、普遍性のあるテーマになっています。終盤で、村の穢れを祓い清めるために大きな藁人形を燃やす祭りのシーンがあり、これと蔵六が襲われるシーンのクロスカッティングには、穢れを背負った藁人形と奇病に罹った蔵六が重なるという意味があります。
実のところ、本作の主人公は蔵六ではなく、妹の春子です。蔵六より春子の心情に重点が置かれ、彼女の精神的成長を描くことで映画が終わります。熊切監督は、本作と同時期に『揮発性の女』を発表していることから、当時「何かに目覚める女」を描きたい欲求があり、それが本作に影響したのではないかと思ってしまうのです。
★★☆☆☆(2016年9月6日(火)インターネット配信動画で鑑賞)
日野日出志の漫画を子供に読ませると、強烈なトラウマを植え付けることができます。