
下宿のママとそこで暮らす学生たちの騒動を描く(映画.comより引用)。1984年公開のにっかつロマンポルノ作品。監督は山本晋也で、出演は愛染恭子、朝吹ケイト、城源寺くるみ、桜金造、モト冬樹、たこ八郎、なぎら健壱、大竹まこと、所ジョージ、九十九一、コント赤信号、タモリ、立川談志。
女優以外の出演者を見てください。お笑い的には豪華過ぎる顔ぶれです。これほど濃い面子が集まる街は、お笑い『シン・シティ』と呼んでも過言ではありません。
銭湯のオヤジである立川談志に呼び込まれ、女湯に入ってくるのは三助のタモリ。得意のインチキ韓国語を披露します。ロマンポルノに出演していますが、当時のタモリは「笑っていいとも!」の司会者です。大らかな時代だったのですねえ。
後に怪談芸人となる桜金造は、まだ髪が多かったモト冬樹と組んで、エルヴィス・プレスリーの物真似を披露します。そのシーンだけだと、桜がグッチ裕三に見えてくるから不思議です。
なぎら健壱と大竹まことのヒゲ芸人対決、矢沢永吉の物真似で下ネタをかます所ジョージ、たこ八郎が巡査で街の秩序は守れるのかという疑問など、見所はたくさんあります。このドリームチームは、山本晋也カントクと赤塚不二夫のラインから実現したのでしょう。
さてストーリーに目を向けると、家主である未亡人(愛染恭子)と下宿人である男子学生との関係は、精神的には擬似母子関係であると言えます。バカでスケベな男子学生たちの行いを、未亡人は包み込むように受け止め、やがて大人の男にして巣立たせるからです。
この「男は永遠の子供」という感覚は、男集団において色濃く出ます。体育会系の男子は、成人してもバカな行動をしがちですよね。学生時代は応援団に所属していた山本カントクは、その感覚を理解し、作品に生かしたのでしょう(因みに若い頃の山本カントクは、今の好々爺から想像できないほど怖かったらしく、助監督で酷使された井筒和幸は、今でも山本カントクの前では恐縮するそうです)。
母的役割にあるため、受動的に性を享受していた未亡人は、ある事件をきっかけに能動的な性の悦びを取り戻します。これは「性の解放」の肯定であり、ロマンポルノ(またはピンク映画)が、その表面的イメージ(女を物扱いしているというイメージ)とは逆にフェミニズム的傾向があることの現れだと思うのです。
★★★☆☆(2016年7月4日(月)DVD鑑賞)
山本晋也なので、監督を「カントク」と表記しました。ほとんどビョーキ!