
ふとした事から知り合った孤独な中年男性とヒッピー少女の関係を描いたメロドラマ(allcinemaより引用)。1973年アメリカ公開で日本劇場未公開作品。監督はクリント・イーストウッドで、出演はウィリアム・ホールデン、ケイ・レンツ。
クリント・イーストウッド監督作品の中でも、「何故これを撮った?」と疑問に思う作品です。『ダーティハリー』に見られる、イーストウッドの硬派なイメージが強かった当時では、より疑問視されたでしょう。それ故、劇場未公開だったのだと思われます(後にイーストウッドは『マディソン郡の橋』を監督しますから、恋愛物を撮れないことはありません)。
ウィリアム・ホールデンとケイ・レンツの年齢差は35歳です。フジテレビの月9ドラマ『ラブソング』では、主演の福山雅治と藤原さくらの年齢差が27歳というだけで、「気持ち悪い」と福山をロリコン扱いする意見がありました。それなら本作の場合、どうなるのでしょう。ちなみに、藤原の35歳年上となると、佐藤浩市、中井貴一、哀川翔あたりのベテラン男優になります。
本作中でも、この年の差カップルの恋愛を不安視する描写があります。その気持ちは分かります。故やしきたかじんや加藤茶の件がありますから。
当初、ホールデンの役はイーストウッドが演じる予定でしたが、「若すぎる」という理由で断念したそうです(イーストウッドとレンツの年齢差は23歳ですが)。そのため、本作でイーストウッドは演出に専念しています(それでも、桟橋に佇む白いジャケットの男役でカメオ出演しています。アルフレッド・ヒッチコックみたいに)。
撮影当時、イーストウッドはレンツに夢中だったらしく、ホールデンに自己投影し、ノリノリで演出していたことが伝わります。とにかくレンツを美しく撮ろうとしています。
主演の二人以外にも、フランク(ホールデン)の友人ボブ(ロジャー・C・カーメル)、ブリージー(レンツ)の友人マーシー(ジェイミー・スミス=ジャクソン)、ブリージーが助けた犬など脇役のキャラクターも充実しています。犬が良い演技をするのは、同じイーストウッド主演『ダーティファイター』のオランウータンの名演みたいです。
イーストウッド監督作品としては意外な作風ですが、イーストウッドの演出力の幅を知るには良い作品です。
★★★☆☆(2016年6月16日(木)DVD鑑賞)
本作は劇場未公開ですが、テレビ放映されたことがあるようです。