「原作とイケメンの組み合わせで内容はテキトーでも観に行く人がいる」『GANTZ』作者が最近の実写映画化に苦言!!
『進撃の巨人』(2015年)に、公開直後から低評価が相次ぐ『テラフォーマーズ』、そして先日製作が発表された『鋼の錬金術師』と、アニメ化もされた人気マンガの実写映画化が相次ぎ、原作ファンたちが阿鼻叫喚状態になっている最近の映画事情だが、この現状についに苦言を呈すマンガ家が現れ話題となっている。
マンガ『GANTZ』(集英社)で知られる漫画家の奥浩哉が、5月29日に自身のTwitter(@hiroya_oku)で「なぜ無理っぽい漫画の実写化が続々と作られるのか? 知名度がある原作とイケメンの組み合わせだけで内容はテキトーでも観に行く人達がいっぱいいるからですよ。コアなファンなんて最初から相手にされてません。儲からなかったら誰も作りません」「少年誌のファンタジーのような世界観全部作らなきゃ無理みたいなやつが無理な企画」と発言。これには、「あ~ぁ、言っちゃったよw」「ほんとにその通りだと思う」「俺たちが見向きもされてない現実に目をそらしてきたというのに…」と大きな反響を呼んでいる。
奥の代表作『GANTZ』は、主人公の玄野を嵐・二宮和也、もう一人の主人公加藤を松山ケンイチ、監督を佐藤信介が務め、2011年に前後編として実写映画化されている。ともに公開2日で興行収入5億円を突破、動員数は40万人を超え、2本あわせて興行収入約60億円を超えという大ヒット作にはなった。
奥の今回の発言に対して、「『GANTZ』実写化に不満が残っているのか?」という声もあったが、これに関して奥は「GANTZやアイアムアヒーローは無理目というよりか、現実的。主人公日本人で、舞台も日本の実際に撮影できる景色だし」と述べていることから、今回の発言は最近の実写映画化ラッシュについての苦言のようだ。
作品の舞台は人型ゴキブリが大量にいる火星、日・米・露・中・独、そして欧州各国のキャラクターが登場する『テラフォーマーズ』や、錬金術が存在し、欧州が下敷きになっている世界観なのに、主人公エドワード・エルリックをHey!Say!JUMPの山田涼介が演じる『鋼の錬金術師』。
そして巨大な壁に囲まれた都市と巨人が存在し、ドイツ人っぽい名前を持つキャラクターがほとんどなのに、キャストを主人公エレン役の三浦春馬をはじめ日本人ばかりで固めておいて、その世界で非常に珍しい東洋人・ミカサ役はなぜか水原希子という不思議な采配を見せた『進撃の巨人』など、奥のいう「世界観全部作らなきゃ無理」な世界で、日本人以外のキャラクターを全て日本人が演じている実写化作品のオンパレード。相次ぐ原作ファンを無視したキャスティングと世界観ぶち壊しの現状に、奥も思わず発言してしまったのだろう。
近年のマンガを原作とする実写映画で成功し、比較的原作ファンからの拒絶反応も少なかった映画といえば、『るろうに剣心』シリーズ(12、14年)や、先日第2作が公開された『HK 変態仮面』、『映画 暗殺教室』シリーズ(15年)、そして『オオカミ少女と黒王子』、『orange』などが挙げられるだろうか。やはりというか、いずれも原作のキャラクターや世界観に寄せようという努力が見られる作品ばかりだ。原作では外国人なのに日本人が演じて人気となったのは、いい感じにギャグへと昇華した『テルマエ・ロマエ』(14年)シリーズぐらいではないだろうか。
「少なくとも日本人の登場人物がほとんどの作品のみ映画化していい。外人設定のキャラを日本人がやると興ざめする」「世界観が無理な作品は成功する気がしない。進撃しかり、テラフォしかり」「ほんとに勘弁してほしいもんですな」というファンからの悲痛の声が多く届くのも無理はない。
世界的に見れば、『アイアンマン』、『アベンジャーズ』などの各シリーズをはじめ、コミックが原作のマーベル作品が圧倒的な支持を得ている。マーベルのヒーローたちの世界を再現するために、本腰を入れてビジュアルを作り上げればファンは支持するものなのだ。予算の規模が違いすぎるだけなのかもしれないが……。
映画『GANTZ』の成功も二宮や松山のファンのおかげだったのでは、という気もするし、イケメンを起用することが悪いとは言わないが、公開前から原作ファンの反発を招くような世界観ぶち壊し実写はもう少し謹んでほしいものだ。だが、『鋼の錬金術師』もジャニーズファンの動員でそこそこヒットしてしまうのだろう。二次元ファンの悩みの種は付きそうにない。
なおネット上では、映画『デスノート』シリーズ(06年)、『カイジ 人生逆転ゲーム』シリーズ(09、11年)、『るろうに剣心』シリーズと、出演したコミック原作映画に良作が多い藤原竜也の評価が今さら再上昇中。「コミック、アニメの実写化で信じられるのは藤原竜也のみ」と囁かれ、ついには動画まで作られているほどだ。暇な人はググってみることをオススメしたい。
転載元:livedoorニュース(おたぽる)
【ここから私の意見】
実写映画化に成功した『GANTZ』の原作者である奥が言うのですから、その意味を映画界は重く受け止めるべきです。同じ奥原作漫画の『変[HEN]』はテレビドラマ化されましたが、美少年である佐藤くん役を佐藤藍子が演じていました。スレンダー体型で、悪く言えば色気が無い佐藤が、ショートカットにして学生服を着れば、少年のように見えます。テレビ朝日の深夜ドラマですら、ここまで原作に寄せる努力をしたのですから、映画はもっと頑張らんかい!ということです。
私個人の見解としては、何も原作に忠実でなければならないとは思いません。原作へのリスペクトを持った上で、要は映画として面白いかどうかです。批判の対象になっている『テラフォーマーズ』を監督した三池崇史は、山本英夫原作の『殺し屋1』も監督しています。浅野忠信演じる垣原や、塚本晋也演じるジジイのビジュアルに大幅な変更がありますが、原作どおりの人体破壊描写に三池流のブラックな笑いが加わり、面白い映画になっています。これも実写映画化を成功させる一つのあり方です(原作者の山本が、三池監督の『新宿黒社会 チャイナマフィア戦争』のイカレっぷりを創作のヒントにしたそうですから、元々両者の世界観に共通性があったのでしょう)。
実写版を観に来るのは原作ファンだけだと思ったら大間違いです。原作を知らないけれども、出演者や監督目当てで観に来る客もいます。その客にクソ面白くない映画を観せたら、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとばかりに原作まで嫌いになります。これは出版社側にとってマイナスです。実写版『デビルマン』を観てしまった人は、そのトラウマで永井豪の傑作漫画『デビルマン』を手にしなくなるということです。
目先の金儲けのために志の低い実写映画を粗製濫造することは、映画界にも出版界にも得ではありません。また、原作ファンの観客も、作り手が本当に原作をリスペクトしているかを慎重に見極めてから、劇場に足を運んでほしいものです。