
罠にはまって留置所に入れられた友人を救出すべく行動する男を描いたハードボイルド映画(映画.comより引用)。1985年公開作品。監督は崔洋一で、出演は藤竜也、倍賞美津子、原田芳雄、室田日出男、佐藤慶、宮下順子、林隆三。
北方謙三原作の角川映画です。配給は東映セントラルで、製作協力はセントラルアーツとあります。両者は東映セントラルという配給会社の製作部門として、セントラルアーツがあるという関係で、実質的には重複しています。
このセントラルアーツは、日活を辞めた黒澤満が代表を務めており、東映にありながら日活の遺伝子を継承している会社と言えます。本作でも、藤竜也に原田芳雄という日活ニューアクションで活躍した二人がメインに起用されています。ちなみに、東映創立60周年記念作品『北のカナリアたち』は、セントラルアーツ製作で、主演が日活出身の吉永小百合なので、東映は日活に「庇を貸して母屋を取られた」形になります(同作で東映の歴史を感じさせるのは、里見浩太朗と福本清三だけです)。
崔洋一は、内田裕也主演の『十階のモスキート』で映画監督デビューしており、ロックな感性の持ち主です。毎年大晦日に開催される、内田プロデュースの「New Years World Rock Festival」の楽屋に必ず顔を出すほどです。本作には、PERSONZのヴォーカルであるJILL(ジル・ジェイド)が出演しています。
引きの画の多用とクールな演出は、大島渚の影響でしょうか。崔は『愛のコリーダ』の助監督でしたから(同作の主演も藤)。また、同じ南国沖縄を舞台にしている、北野武監督の『3-4X10月』や『ソナチネ』と似た雰囲気もあります。北野は大島監督の『戦場のメリークリスマス』に出演していることから、崔と北野は大島イズム継承者という見方もできます(北野は『龍三と七人の子分たち』で藤を主役に起用しました)。
崔は、本作の他に『Aサインデイズ』や『豚の報い』でも、沖縄を舞台にした映画を監督しています。在日という出自を絡めた『月はどっちに出ている』や『血と骨』で、マイノリティの生き様を描いたように、本土に対する沖縄の立場をマイノリティと捉えているようです。外部から来た主人公が、沖縄ではマイノリティになるという逆転的な構造も見られます。マジョリティからの圧力や束縛に対し、マイノリティは如何にして抗うべきかは、崔監督作品に共通したテーマであり、そこにロックの匂いがします。
★★★☆☆(2016年4月12日(火)DVD鑑賞)
崔監督は何かと多忙で、『カムイ外伝』以降、新作がありません。