【映画評】球形の荒野 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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第二次大戦末期、日本を破滅の淵から救うため、祖国、妻子を捨てた男が、十七年ぶりに帰郷した事から発生する殺人事件、揺れ動く父と娘の心情をミステリアスに描く(映画.comより引用)。1975年公開作品。監督は貞永方久で、出演は竹脇無我、島田陽子、乙羽信子、岡田英次、山形勲、藤岡琢也、芦田伸介。
 
松本清張原作のミステリーです。前年に公開された名作『砂の器』と比較すると、作りが雑というか、薄っぺらな印象を受けます。原作のボリュームなら、もっと大きなスケールのある話にできたはずです(実際のところ、本作の撮影期間は1ヶ月もなかったそうです)。
 
キャスト面にも問題があります。藤岡が演じるのは強面で貫禄ある悪役ですが、どうしても人の良さが出てしまいます。やっぱり「おかくら」のご主人(『渡る世間は鬼ばかり』)では……。また、芦田の金髪のチープ感は何とかならなかったのでしょうか。顔立ちに合っていなくて、やけに人目を引く怪人物になっています。
 
本作最大の失敗は、オープニングクレジットでキャストの役名と出演者名を併記していることです。例えば「添田彰一(役名) 竹脇無我(出演者名)」という表記です。これで野上顕一郎役が誰か明らかにするのは、本作のミステリー要素を台無しにしています。オープニングの段階では、野上は深い事情により死んだことになっています。だから、別人を装って祖国日本に帰って来るのです。それなのに、野上役をオープニングでクレジットすることで野上は生きているとバラし、別人を装っていることまで無意味にしているのです。これでは、原作既読の観客でも白けてしまいます。せめて役名はクレジットすべきでなかったでしょう。
 
清張作品らしく、戦争の闇という社会的テーマを扱っていますが、そのスケールの大きさと家族愛を描く部分とのバランスが取れていない気がします。数ある清張映画化作品の中で、本作は失敗作に属するものです。
 
☆☆☆☆(2016年3月2日(水)DVD鑑賞)
 
原作人気に便乗した駄作は、今の日本映画界に溢れています。その意味では時代の先取りです。
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