【映画評】SWEET SIXTEEN | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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15歳のリアムの夢は、もうすぐ刑務所から出所する母と、母を嫌って家出した姉といっしょに暮らすため、自分の家を手に入れること。親友のピンボールとともに、母のボーイフレンドが隠しているドラッグを手に入れ、それを売って家を買う資金を作ろうとするが(映画.comより引用)。2002年日本公開作品。監督はケン・ローチで、出演はマーティン・コムストン、ウィリアム・ルアン、アンマリー・フルトン、ミッシェル・クルター、トミー・マッキー、ゲイリー・マコーマック。
 
イギリスの庶民階級の生活を描く点で、『トレインスポッティング』や『フル・モンティ』と同じ系譜にあります。しかし、『トレインスポッティング』はダニー・ボイル監督のスタイリッシュ感覚が際立ち、『フル・モンティ』がコメディ調であるのに対し、本作は生々しくダークな印象が強い作品です。
 
お世辞にも品行方正とは言えず、暴力的な青春像という点で、井筒和幸監督の『ガキ帝国』や『岸和田少年愚連隊』に似ています。本作の主要キャストが演技経験の乏しい素人で占められているという共通点もあります(その割に、素人とは思えないほど演技が上手です)。『ガキ帝国』の紳助竜介も、『岸和田少年愚連隊』のナインティナインも、撮影当時は映画の演技経験がない素人同然でしたから。
 
タイトルの「SWEET」はどういう意味でしょうか。直接的に主人公リアム(コムストン)の未熟さを「甘い」と評価したのでしょうか。それとも逆説的にリアムを取り囲む厳しい環境を皮肉っぽく表したのでしょうか。後者であれば、ヒーロー不在の現代を描いた『ヒーローショー』(井筒監督)や、東日本大震災直後の絶望的状況を描いた『希望の国』(園子温監督)みたいなものです。どちらの意味にも受け取れそうな本作です。
 
母親を信じて、青臭いほどの純粋さで突っ走ったリアムが、悲劇的な結末に至るラストを見ると、痛々しい思いに襲われます。「爽やか」や「甘酸っぱい」では形容できない、鬱屈して苦い青春が世界にはあるのです。
 
★★★☆☆(2016年2月27日(土)DVD鑑賞)
 
本作はスラングを頻出するので、イギリスでは18禁で上映されたそうです。
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