【映画評】痴漢電車 下着検札 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

 
戦前の満州から日本に持ち込まれた黒真珠の指輪の行方を探すミステリー。1984年公開のピンク映画。監督は滝田洋二郎で、出演は蛍雪次朗、竹村祐佳、風かおる、竹中直人。
 
2009年には『おくりびと』で米国アカデミー賞外国語映画賞受賞監督になり、2014年には紫綬褒章を受章したことで、今や巨匠扱いされる滝田監督の原点が、この「痴漢電車」シリーズです。11本も監督したのですから、嫌々撮ったのではないでしょう。山田洋次監督における「男はつらいよ」シリーズみたいなもので、代表作と呼ぶべきです。
 
昭和史の謎を解く文豪、松木(松本ではない)清張役と、サングラスの似合うダンディな俳優、優作役を、竹中ナオト(当時)が演じています。当時やっていた物真似だけで全編貫き通す怪演を見せてくれます。主演の蛍雪次朗は、他の「痴漢電車」シリーズ作品にも出演し、一般映画進出後の滝田監督作品にも出演しています。両者の強い信頼関係を知ることができます。
 
ピンク映画の実用性として、濡れ場シーンは盛り込まれています。それでも物語の基本はミステリーで、密室トリックと謎解きシーンまであります。そこにコメディ要素もあり、当時流行した『フラッシュダンス』のパロディもあります。その上、特撮シーンまであります。おそらく日本初であろう膣内視点からの映像と、ラストのストップモーション・アニメがそうです。低予算のピンク映画にしては、異例の凝り様です。
 
これほど遊び心のある映画を作っていた滝田監督ですが、すっかり巨匠化し、自由に冒険できなくなったのか、『天地明察』以降、新作の話を耳にしません。ここは思い切って原点回帰してはどうでしょうか。アカデミー賞受賞監督のピンク映画があったら、観てみたいですよ。
 
★★★☆☆(2016年2月24日(水)DVD鑑賞)
 
滝田監督の一般映画デビュー作は、内田裕也主演『コミック雑誌なんかいらない!』です。
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