
今は漁師として生活している中年男の隠された過去と揺れ動く愛を描く(映画.comより引用)。1985年公開作品。監督は降旗康男で、出演は高倉健、田中裕子、田中邦衛、大滝秀治、小林稔侍、ビートたけし、乙羽信子、奈良岡朋子、いしだあゆみ。
脱任侠映画のため、東映を退社した健さんが、東映以外でヤクザ役を演じた作品です(本作は東宝作品で、退社後ですが『冬の華』は東映作品です)。東映作品以外で、初めて刺青姿を見せたとも言えます。
田中邦衛、大滝秀治、小林稔侍、奈良岡朋子は、他の健さん主演作品でも共演しており、「劇団高倉健」の様相を成しています。『タッチ』や『ラフ』で知られる漫画家、あだち充は、各作品の登場人物の顔が似ているという批判に対し、「同じ劇団の役者が違う作品を演じているようなもの」と反論しました。「劇団高倉健」も、そんな感じです。
本作で健さんとビートたけしの共演を見ることができます。この縁が健さんの遺作となった『あなたへ』の再共演を実現させ、幻となった健さん主演の北野映画構想につながります(これは『龍三と七人の子分たち』に生まれ変わりました)。たけしは覚醒剤の売人であるヤクザ役を格好悪く演じます。覚醒剤を捨てた螢子(田中裕子)を、包丁片手に追い掛け回すシーンがあります。このシーンを観ると、どうにもバラエティ番組で軍団の連中を追い掛け回す芸人たけしの姿を思い出してしまうのですが。
人を殺めた過去を隠し、平和な生活を送っていた男が、再び非道の道に戻るというストーリーは、クリント・イーストウッド主演の『許されざる者』を思わせます。その非道の道に戻る決心をするまでの動機付けが弱く、当時の田中裕子の色気を以てしても、説得力を欠くというのが、本作の欠点のように感じました。
★★★☆☆(2016年1月27日(水)テレビ鑑賞)
覚醒剤、ダメ、ゼッタイ!