【映画評】るろうに剣心 京都大火編 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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かつては「人斬り抜刀斎」と恐れられた緋村剣心は、新時代の訪れとともに穏やかな生活を送っていた。しかし、剣心の後継者として「影の人斬り役」を引き継いだ志々雄真実が、全身に大火傷を負わせた明治政府へ復讐を企てていると知った剣心は、逆刃刀を手にとり、単身で志々雄のいる京都へ向かう(映画.comより引用)。2014年公開作品。監督は大友啓史で、出演は佐藤健、武井咲、伊勢谷友介、青木崇高、蒼井優、神木隆之介、土屋太鳳、田中泯、福山雅治、江口洋介、藤原竜也。
 
和月伸宏の原作漫画は、私が週刊少年ジャンプを読まなくなった後から連載開始したので、全く読んでいません。しかし、テレビアニメ化されるほどのヒット作なので、大まかな設定は耳に入ってきました。そして前作『るろうに剣心』も観ています。それらから思うのは、本作はパラレルワールドとしての幕末・明治時代であり、ファンタジーとしての時代劇として観ると面白いということです。それは時代考証に細々と文句を垂れる客観性より、作品が提示した世界観に説得力があるかどうかの主観性に重きを置いて観ることです。
 
大友監督は、NHK大河ドラマ『龍馬伝』で広く注目を浴びました。その演出の一つに「汚し」があります。武士階級といえども、常に綺麗な身なりをしている訳ではなく、日常生活を営み、しかも野外で乱闘などすれば、それなりに汚れます。ましてや町人や農民であれば、身なりに構っている暇など無く、粗末になって当然です。その考えからすれば、メイクや衣装に汚しを入れた方にリアリティがあると一般的に思われています。
 
しかし、私たち現代人で実際に当時の人々がどんな身なりをしていたかを鮮明に記憶している者は皆無に等しいはずです。歴史的記録があると言っても、そんなものはいくらでも改竄や捏造が可能です。結局「汚し」がリアリティを生むというのは、現代人である観客に対して説得力があるからです。
 
原作漫画も含め、本作の時代設定を明治時代にし、髷を結った登場人物がいないことにしたのも、観客(読者)への説得力を増し、ヒットに結びついた原因の一つではないでしょうか。現代において、日常的に髷を結っているのは相撲取りしかいません。髷を結った人物は嘘っぽく、それより剣心(佐藤)のような赤髪や、刀狩りの張(三浦涼介)のような金髪の方に親近感が沸くという、現代人である観客への説得力を重視した設定と思われます(ただし、これは世界観の統一性の問題であり、髷を結った登場人物ばかりの時代劇でも説得力を出すことはできます)。
 
本作の殺陣は、谷垣健治アクション監督により、香港アクションの動きを取り入れたスピード感あるものになっています。従来の時代劇における殺陣とは、大きく異なります。これは原作漫画とテレビアニメによって、多くの観客の脳内にはアクションシーンのイメージが出来上がっているという事情に対抗するためでしょう。観客(特に原作ファン)の想像を上回り、かつ漫画やアニメに無い特性を付けるため、「生身の肉体が発する躍動感」を強調する動きにしたのだと解します。ここでも、実際に存在した流派との適合性より、現代の観客への説得力の方を意識しています。
 
原作が漫画ということもあり、奇抜なキャラクターが登場しますが、志々雄真実(藤原)が群を抜いて現実離れしています。「大火傷を負って暗黒面に堕ちる」点で『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』のダース・ベイダー、「主人公の正義を挑発する」点で『ダークナイト』のジョーカーの要素を併せ持つキャラクターです。映画史上に残る悪役二人を掛け合わせた強烈な極悪人は、現実にはいないでしょう。もしいたとしても、身近にいるリアルな存在ではないでしょう。この悪の権化に説得力を与えるためには、リアリティある演技ではなく、舞台で鍛えた藤原の大芝居が必要であり、絶妙な配役と言えます。
 
本作を実写映画化するに当たっては、原作ファンだけでなく、時代劇ファンからの反応も視野に入れなければならず、かなり念入りで手の込んだ映画作りをしたと思われます。私としては、「原作どおりか」や「本当か嘘か」を意地悪な姑のように細々とあげつらう見方はせず、「映画は嘘であり、その嘘が面白いかどうか(説得力があるかどうか)」という視点から見て、本作は上出来だと評価します(逆に言えば、どれだけ原作どおりで時代考証が厳密であっても、映画として面白くなければ、その作品にはクソ映画の烙印を押します)。
 
物語の方は、剣心、志々雄、四乃森蒼紫(伊勢谷)が前時代の暗い過去を引きずり、新時代でどう落とし前をつけるかに関心を持たせながら、次回作『るろうに剣心 伝説の最期編』に続きます。どのような結末になるのか、期待は膨らみます。

 

★★★★☆(2016年1月15日(金)DVD鑑賞)

 

外資のワーナー・ブラザーズ製作なので、お金はかなりかかっていそうです。
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