【映画評】ドラゴンヘッド | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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突然崩壊した世界をサヴァイヴすることになった高校生男女の姿を描いた青春SFパニック篇(映画.comより引用)。2003年公開作品。監督は飯田譲治で、出演は妻夫木聡、SAYAKA(神田沙也加)、山田孝之、藤木直人、根津甚八。
 
望月峯太郎の人気漫画を原作とした実写映画化作品です。週刊ヤングマガジン連載期間が1994年から1999年までであり、阪神大震災やオウム真理教地下鉄サリン事件があった、世紀末の終末感を象徴する内容になっています。連載開始が阪神大震災より前ですから、どこか予言めいた不気味さもあります。
 
それほどの原作を映画化するのですから、作り手も気合が入ったのでしょう。才能ある若手俳優を配役しています。今となっては、妻夫木、神田、山田それぞれが映画や舞台で主役を任せられても、十分に務めを果たせそうな安心感があります(神田は本作で映画デビューしました)。
 
本作で役得なのは、山田でしょう。いじめられっ子が極限状態下で狂い始め、『蝿の王』のような原始的狂乱を見せるという、演じがいのある、おいしい役ですから。藤木が嫌な性格の自衛官役を演じたのも悪くありません。爽やかなハンサム役より、イケメンは悪役を演じた方が心の底から憎めますから(妬み?)。
 
逆に損をしているのは、神田です。危機的状況下でギャーギャーと騒ぐので、「守ってあげたい」という感情が起こりません。中高生のサバイバルという点で本作と共通する、『バトル・ロワイアル』で「守ってあげたいオーラ」を出していた、中川役の前田亜季と比べ、天賦の才能に違いを感じます(神田の母親は、ぶりっ子で有名だったはずなのに)。
 
最も損をしているのは、主人公役の妻夫木かもしれません。本作のようなサバイバル物の場合、観客は主人公に感情移入し、シンクロすることによって同じ状況を追体験するのが常道です。しかし、本作の主人公に感情移入させる演出はなく、観客は彼がただ彷徨っているのを傍観しているだけです。本作の冒頭は、東京の街並みに主人公のナレーションが被るシーンですが、ここで主人公の日常を観客に提示し、それから非日常な危機的状況に落とすという演出をした方が、ベタではあるけれども、効果的だったのではないかと思うのです。漫画と違って、自分のペースで読み返すことができず、上映時間内で十分な説明を終えなければならない映画の場合、伝わり易いベタ演出でも有効活用すべきです。
 
更に苦言を呈せば、かなり強引な展開が目に付きます。例えば、病院の地下室に逃れた主人公たちが、暴徒の追撃に気づき、病院から自動車で脱出する展開で、地下室から出て自動車に乗り込むまでの流れが省略されています。地下室の出入り口は一つしかなかったはずですから、どうやって脱出したのか気になります。また、妻夫木と神田の役が、いつの間にか恋愛感情みたいなものを抱いているのも変です。一方は頼りなく彷徨い、他方はギャーギャーと騒ぐ足手まといになる二人が、どのタイミングで深い信頼関係を築いたのかが、観客には伝わりにくいです。
 
原作漫画は多くの謎を残して完結しています。だから、映画版も謎だらけで終わっていいとでも思ったのでしょうか。しかし、本作の場合、謎という大層なものではなく、単なる説明不足ではないかと指摘したいのです。
 
☆☆☆☆(2016年1月11日(月)DVD鑑賞)
 
本作の製作はTBSです。TBSは感動作だと主題歌をMISIAにしている印象があります。
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