【映画評】男はつらいよ 純情篇 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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毎度お馴染み寅さんが故郷・葛飾柴又に帰って、ひと騒動起こす人気シリーズ第6作。1971年公開作品。監督は山田洋次で、出演は渥美清、倍賞千恵子、若尾文子、森川信、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、宮本信子、森繁久彌。
 
冒頭から長崎の五島で、渥美VS森繁による「昭和の大物喜劇役者対決」に、若き日の宮本が絡むという豪華な顔合わせです。それにしても、宮本の声が今と違って可愛らしいです。夫である伊丹十三監督の『マルサの女』以降、強い女の声質に変わっていますから。
 
タイトルに「純情篇」とあり、前作『男はつらいよ 望郷篇』までと比べ、寅さん(渥美)の下品なクズ加減が抑えられています(テキ屋らしい売り口上は変わりませんが)。前作を最終作としていた山田監督が、シリーズ続行を決められ、寅さんのキャラクターの仕切り直しを図ったからでしょうか。それとも、山田監督がマドンナ・夕子役の若尾に魅せられ、格好つけたからでしょうか。山田と同じ松竹の巨匠、小津安二郎が大映で監督し、若尾が出演した『浮草』は、いつもの小津スタイルらしからぬ作品でしたからね。
 
『男はつらいよ』シリーズは、ストーリーの大筋がほぼ同じです。しかし、細部に目を凝らせば、違いを発見できます。本作で、寅さんと妹・さくら(倍賞)が再会するシーンで、夕子に一目惚れをした様子の寅さんを見て、さくらは一瞬だけ物語の結末を予感したような表情をします。「あ、兄さんまたやらかすな」という表情です。さくらは結末を知っているからこそ、寅さんの身を心配します。これは観客と同じ視点です。『男はつらいよ』シリーズの主人公は寅さんですが、観客が感情移入しているのは、実のところ、寅さんを見守る妹・さくらなのです。
 
寅さんは物語の結末を知らないから失敗し、失恋し、故郷を去ることになります。何も知らない愚かな兄と、全てを知る賢い妹。『男はつらいよ』シリーズは、この兄妹を中心とする物語なのです(山田監督は『おとうと』において、賢い姉と愚かな弟の関係を描いています)。
 
★★★☆☆(2015年12月21日(月)DVD鑑賞)
 
松村達雄が演じるスケベ医者も面白い本作です。
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