
CIA工作員、アラブの王族、米国の石油企業、イスラム過激派テロリストら石油利権の周辺にうごめく人間たちの運命をドキュメンタリータッチで描く(映画.comより引用)。2006年日本公開作品。監督はスティーヴン・ギャガンで、出演はジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ジェフリー・ライト、クリス・クーパー、ウィリアム・ハート、アマンダ・ピート、クリストファー・プラマー
タイトルは中東シリア周辺地域のことを意味するそうです。劇場公開時、本作に関心はありましたが、観ていません。だって、自動券売機ではなく、有人のチケット売り場で「シリアナ」と言えますか?
製作総指揮のスティーヴン・ソダーバーグは、ギャガン監督と『トラフィック』でも組んでいます(『トラフィック』ではソダーバーグが監督で、ギャガンが脚本でした)。出演者のクルーニーとデイモンは、『オーシャンズ11』などソダーバーグ作品の常連俳優です。言ってみれば、ソダーバーグの「同志」で作られた映画で、日本だと大島渚が「同志」のスタッフや俳優で作った創造社作品みたいなものです。
国籍も人種も身分も異なる登場人物が大勢出てくる、社会派群像劇なので、人間関係が複雑で話の焦点を合わせづらいという短所があります。登場人物のキャラクター付けもステレオタイプ的で、深く掘り下げてはいません。
本作は、個々の人物を見るというより、実体のない「世界の構造」を見る映画です。この「世界の構造」は、欲深い強者が弱者を非人道的に搾取し、大事なものを奪われた弱者の憎悪が復讐を生み、それが連鎖していくという愚かなシステムです。血も涙も情もないシステムの中では、人間性が非合理的な阻害物として切り捨てられます。
「世界の構造」というシステムの一部に組み込まれていた、二人の登場人物は、ラストで「我が家」に帰っていきます。そのシステムから離脱することで、人間性を取り戻したということです。
★★★☆☆(2015年12月14日(月)DVD鑑賞)
本作で扱われた中東問題は、現代ともつながっています。