【映画評】さよならドビュッシー | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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ピアニストを目指す16歳の遥は、両親や祖父、従姉妹らに囲まれ幸せに暮らしていたが、ある日火事に巻き込まれ、ひとりだけ生き残る。全身に火傷を負い、心にも大きな傷を抱えた遥は、それでもピアニストになることをあきらめず、音大生・岬洋介の指導の下、コンクール優勝を目指してレッスンに励む。しかし、周囲で不吉な出来事が続発し、ついには殺人事件まで起こってしまう(映画.comより引用)。2013年公開作品。監督は利重剛で、出演は橋本愛、清塚信也、柳憂怜、相築あきこ、山本剛史、ミッキー・カーチス。
 
中山七里の原作小説どおりなのか、CBC(中部日本放送)が製作に関わっているからなのか、本作の舞台は愛知県です。同県出身の戸田恵子、三ツ矢雄二、堤幸彦が出演しています。本筋と何の脈絡もなく、名古屋城や味噌煮込みうどんを盛り込むような品のないPRが無かったことには、好感を持てます。
 
橋本愛は声と動きに制約のある役なので、表情や目の芝居で心情を表現しています。他の作品でも、自己感情を激しく表に出さず、何か秘密を持っているような役(クールでミステリアスな役)を演じることが多い、橋本のキャラクターは、本作の役柄にぴったりです。
 
本業がピアニストである清塚信也は、本職らしい佇まいがよく、演技も酷くはありません。清塚が演じる岬洋介は、高度な推理能力を持ち、モジャモジャ頭を掻く癖があり、遺産相続が絡んだ事件に巻き込まれます。これは、横溝正史が生み出した名探偵、金田一耕助のキャラクターと似ています
 
本作はミステリー要素が薄く、遥(橋本)がピアニストとして成長する部分が中心です。それゆえミステリーを期待した観客の一部からは、「橋本愛のアイドル映画」という評価を受けています。この評価は的を射ており、本作には1980年代に薬師丸ひろ子や原田知世を売り出すために作られた、角川映画に近いものがあります。前述のとおり、岬洋介=金田一耕助であることは『犬神家の一族』です。劇中で本職のピアニストに演奏させるのは、劇中劇で蜷川幸雄に舞台演出をさせた『Wの悲劇』です。更に遥と従姉妹ルシアの少女時代の回想シーンは、大林宣彦監督の『時をかける少女』のように美しく撮られています。
 
利重監督は、それらを意図的に仕掛けたのでしょうか。結果として、本作は同じ橋本出演の『アナザー Another』なんかより、ずっと(80年代)角川映画の血を受け継いでいるかのような作品になっているのです。
 
★★★☆☆(2015年12月7日(月)DVD鑑賞)
 
冒頭の解説文中に「殺人事件」とありますが、それは誤りです。
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