
題名は人間の心の狭さが生む“不寛容”。同時進行する4つの時代の4つの物語に4本分の技法と大胆な話術を駆使し、クライマックスでひとつに結集する。悪に走り無実の罪で死刑を宣告される現代の青年、裏切られた神の子キリストは十字架にかけられる、紀元前のバビロンでは権力に執着する悪の高僧たち、中世のパリでは王太后が清教徒を虐殺する。画期的なスケールの巨大セットも話題。1989年には最高入場料8000円で生オーケストラつき再映された(DVDパッケージの紹介文より引用)。1916年製作で、1919年日本公開作品。監督はD・W・グリフィスで、出演はリリアン・ギッシュ、メエ・マーシュ、ロバート・ハロン、コンスタンス・タルマッジ。
『國民の創生』をヒットさせたグリフィス監督が、巨額の製作費をつぎ込んで作るも、興行的に惨敗。しかし、当時としては斬新な技法を用いたことにより、ヨーロッパでは評価され、映画史に名を残す作品になりました。本作がヨーロッパで公開された当時、第一次世界大戦で疲弊した民衆の心に、その内容が強く響いたのも高評価の一因と言われています。
DVDパッケージにもある、バビロン古代都市のセットは圧巻です。現代だったら、CGで再現するのがやっとで、実際に建造するとなれば、それだけで映画数本分の予算が飛びます。その他の時代のシーンも、セットの大きさやエキストラの多さに、贅沢さを感じずにいられません。
複数の時代のエピソードをオムニバスで構成するのは、近年だと『クラウドアトラス』で、観客を作品に引き込むクロスカッティング手法は『ゴッドファーザー』で用いられるほど、定着した技法です。『クラウドアトラス』の場合、東洋の輪廻転生思想も取り入れているので、手塚治虫の漫画『火の鳥』に近いものを感じます。
主演のギッシュは、エピソードの間に「ゆりかごを揺らす女」として登場します。ゆりかごは人間世界を表しており、本作で描かれる不寛容なエピソードを取るに足らない、ちっぽけな出来事だとしているのです。ゆりかごを揺らす女を火の鳥に置き換えると、本作は『火の鳥』にも影響を与えていると言えます。
★★★☆☆(2015年10月10日(土)DVD鑑賞)
本作のDVDにも淀川長治の面白い解説が収録されています。あれはもう話芸の域に達しています。