【映画評】帰って来たヨッパライ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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大学生活最後のバカンスに日本海へ遊びに行った悪友3人組は、海で泳いでいる間に衣服を何者かに盗まれてしまう。そこで銭湯に行くが、湯気の中から現れたネエちゃんに服を盗めと言われ……(映画.comより引用)。1968年公開作品。監督は大島渚で、出演は加藤和彦、北山修、端田宣彦、佐藤慶、緑魔子、渡辺文雄、小松方正、殿山泰司、戸浦六宏。
 
当時大ヒットしたフォーククルセダーズの曲を題名にし、彼らが主演を務めたコメディです。『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』と同ジャンルですが、大島監督なので、一筋縄ではいかない、笑えないコメディに仕上がっています。
 
映画の途中で冒頭のシークエンスが繰り返される演出が、当時から斬新と言われています。これは、「帰って来たヨッパライ」の一度死んだヨッパライが生き返るという歌詞に沿ったものです。しかし、本作が日本と韓国の民族問題を扱っていることから、大島監督の主眼は、「帰って来たヨッパライ」ではなく、劇中で歌われる「イムジン河」に置かれています。
 
「イムジン河」はフォーククルセダーズの第2弾シングルとして発売が予定されていながら、政治的配慮により中止され、長い間マスコミの自主規制で「放送禁止歌」とされてきました。この事実については、井筒和幸監督の『パッチギ!』が詳しいですね。
 
「イムジン河」の発表を自粛するような現実社会の欺瞞や虚妄を、大島監督は本作で描きたかったのではないでしょうか。夢と現実が交錯するシュールな白日夢のような展開。誰が日本人か韓国人か分からなくなる街頭インタビュー。住民全てが殿山泰司になる土地(『マルコヴィッチの穴』の先取り?)。本作は笑えませんが、現実社会も(違う意味で)笑えません。
 
ところで、本作のように笑えないコメディには、ビートたけし(北野武)監督の『みんな~やってるか!』があります。北野監督作品には、『3-4X10月』や『TAKESHIS’』という、本作と同じ夢オチを用いた作品もあります。やはり北野は黒澤明より大島の影響が大きいと思うのです。
 
★★☆☆☆(2015年10月9日(金)DVD鑑賞)
 
日韓関係を扱ったからといって、大島渚は反日ではなく、むしろ愛国者だったと思います。
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