
港の沖仲仕たちの間に君臨するボスと、周囲の反対を押して彼に単身立ち向かうボクサーくずれのチンピラ(Yahoo!映画より引用)。1954年日本公開作品。監督はエリア・カザンで、出演はマーロン・ブランド、エヴァ・マリー・セイント、リー・J・コップ、カール・マルデン、ロッド・スタイガー。
ブラック経営者に勇気を持って対抗するという点で、『蟹工船』に近いものがあります。沖仲仕たちが仕事を求めるシーンで『シンデレラマン』を、主人公が鳩を飼っているエピソードで『愛と希望の街』を思い出しました。
しかし、何といってもブランド演じる主人公の「反抗的な不良」というキャラクターは、その前の『欲望という名の電車』の流れにあり、『エデンの東』でのジェームズ・ディーンに通じるものを感じます。いずれもカザン監督の作品です。カザン監督は多くの名優を輩出したアクターズ・スタジオの創立者です。アクターズ・スタジオ出身の不良キャラ俳優は、ブランド、ディーンの他、ポール・ニューマン、ミッキー・ロークへと受け継がれていきます。
カザンは、「赤狩り」の嵐が吹き荒れる1952年に、共産主義者であるとの嫌疑をかけられます。それに対し、カザンは司法取引で仲間を売ることによって保身を図ってしまいます。この行動は、1998年にカザンが米国アカデミー賞「名誉賞」を授与する時に、ハリウッド映画人から批判の声が上がるほど、影響を残しました。
カザン自身も、この行動を悔いていたことは明らかです。その思いを本作の主人公が強力なボスにたった一人でも対抗する姿に投影させたのではないでしょうか。不正に対しては勇気を持って立ち向かうこと、後悔する生き方をしないことの大事さが、本作とカザンの人生から伝わってきます。
★★★☆☆(2015年8月15日(土)DVD鑑賞)
本作の主人公は、その後のし上がってマフィアのゴッドファーザーに・・・って、違う映画だよ!