
変わらぬ日々を淡々と送る30代半ばの男が、恋人に捨てられた若い女との出会いを通して生きる力を見出していく姿を描いた人間ドラマ(映画.comより引用)。2001年公開作品。監督は熊切和嘉で、出演は寺島進、菊地百合子(菊地凛子)、外波山文明。
『バベル』で一躍有名になる前の菊地が出演しています。現在と比べると、若々しくて可愛い娘です。本作の撮影当時、夫の染谷将太がまだ小学生だったことに驚きです。
熊切監督にとっては、『鬼畜大宴会』で衝撃的デビューを果たした次の作品です。前作のような直接的グロテスク描写はなく、オフビート(脱力)感たっぷりで展開しますが、所々に尖ったものが入ります。同じ大阪芸術大学出身の山下敦弘監督と似た作風です。本作は撮影助手に近藤龍人が、照明助手に向井康介が参加しており、山下監督との関連は強いです。
本作の舞台は、熊切監督の出身地である北海道なので、ディテールがしっかりしています。広大な大地、直線的な道路、道路沿いにポツンとあるドライブインやガソリンスタンド。日本の都会では見かけない、これらの風景は『ギルバート・グレイプ』で描かれた、アメリカの田舎に近いものです。
富裕層に属するセレブの生活より、大多数を占める下層が住む田舎の生活を見た方が、アメリカという国の現実が分かります。同じように、東京の一等地に住むセレブのオシャレ生活なんかより、地方生活者の平凡な日常の方に、日本という国の本当の姿があります。「映画は夢の世界」と割り切るのもよろしいですが、現実を見せることも映画というジャンルの役割の一つだと思うのです。
★★★☆☆(2015年3月6日(金)DVD鑑賞)
『海炭市叙景』も『私の男』も舞台は北海道ですね。