【映画評】なつかしい風来坊 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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国家公務員である早乙女の平凡な家庭に、土方の伴源五郎が入り込むことで起こる人情喜劇。1966年公開作品。監督は山田洋次で、出演はハナ肇、倍賞千恵子、有島一郎。
 
山田監督と言えば、『男はつらいよ』シリーズがお馴染みです。しかし、同シリーズで主演の渥美清と組む前は、ハナと組んで『馬鹿まるだし』、『いいかげん馬鹿』、『馬鹿が戦車(タンク)でやって来る』の「馬鹿」三部作などで優れた喜劇を世に送り出していました。本作や「馬鹿」三部作でハナが演じたキャラクターは、『男はつらいよ』で渥美が演じた車寅次郎の原型と言えます。本作の場合、名前も「伴源五郎」と似ています。
 
本作で有島が演じる早乙女は、お堅い職業で茅ヶ崎に居を構えるという平凡な家庭の主です。それこそ娘の嫁入りぐらいしか事件が起こらないような、ありふれた家庭です。そのような小津安二郎映画的な家庭に、「主がイボ痔」という設定や、源五郎という「異物」を混入することで、次々とドラマを生じさせています。これは、山田監督(と脚本の森崎東)の小津に対する批判と読み取れます。「上品ぶってるんじゃないよ」とばかりに、若い二人が松竹の大先輩に噛み付いたような感じです。
 
本作には、陰湿な官僚社会やオバチャン的女性社会への批判も見られます。前述した『馬鹿まるだし』は、侠客に憧れている男を格好悪く描いた、東映任侠映画批判になっています。山田監督はマンネリ人情映画監督などではなく、東大卒インテリで共産党シンパの辛口批判者という面があることを、本作により思い知らされます。そして、その批判を喜劇という体裁で表現するこだわりが、山田監督の凄さになっているのです。
 
★★★★☆(2015年2月16日(月)DVD鑑賞)
 
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