NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の今週放送分では、太平洋戦争下でスコットランド人のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)が迫害される様子が描かれます。外出すれば石を投げられ、娘のエマ(優希美青)のノートには「鬼畜の娘」と落書きされてしまいます。
前期の連続テレビ小説『花子とアン』でも、同じような太平洋戦争下のエピソードがありました。英文翻訳家である村岡花子(吉高由里子)が、やはり家屋の窓ガラスを割られるなどの嫌がらせを受けます。
これは太平洋戦争下に限った話ではありません。IS(「イスラム国」)の日本人人質殺害事件の後、在日イスラム教徒への暴言や嫌がらせがあったことは記憶に新しいです。いつの時代も、この手の軽挙妄動バカがいます。醜悪なヘイトスピーチを繰り返すバカと同種です。両ドラマの制作局(『マッサン』はNHK大阪で、『花子とアン』はNHK東京)は違いますが、NHK内部には、そんな時代への危機感や嫌悪感を抱き、ドラマというジャンルで表現する気骨ある人たちがいるようです。
『花子とアン』では、「ラジオのおばさん」として全国の子供たちにニュースを語り聞かせていた花子が、太平洋戦争勃発により、軍部の統制を受けるエピソードがありました。ドラマ放送開始前に、安倍首相の“おともだち”である籾井勝人氏がNHK会長に選任された事と無関係ではないでしょう。軍部の統制に従うNHK局員を演じていたのが、籾井会長と同じ九州出身の岩松了であるのは偶然でしょうか。
『花子とアン』や『マッサン』の内容に気に食わない部分があっても、両ドラマとも高視聴率番組なので、籾井会長(その背後の首相官邸)は現場介入できないでしょう。「素人の会長が口を出したせいで、視聴率が下がった」という結果になったら、面目丸潰れですから。
ただし、安倍首相のお膝元である山口県(長州藩)が舞台で、祖母の代から創価学会員である井上真央が主演のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』が低視聴率に悩んでいるのは、自公政権としては面白くないでしょうから、現場介入があるかもしれません。