【映画評】ホタル | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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激動の昭和を生き抜いた特攻隊の生き残りである男と、その妻の人生を描く人間ドラマ(映画.comより引用)。2001年公開作品。監督は降旗康男で、出演は高倉健、田中裕子、奈良岡朋子、井川比佐志、小林稔侍。
 
本作と『千年の恋 ひかる源氏物語』は、東映創立50周年記念作品です。60周年記念作品は『北のカナリアたち』です。東映は節目の記念映画に、オールスターキャストでチャンバラ時代劇やヤクザ映画を作ってはくれないのでしょうか。その方が歴史の重みを感じられますが。
 
木村大作カメラマンが期待を外さぬ良い仕事をしています。井川が猛吹雪の中を歩くシーンは、『八甲田山』を思い出させます。それでも、VFXディレクターまで任せるのはどうかと思います。技術面がどうとか言うより、画に古臭さがあるのは否めません。VFX面に関しては、技術の進歩を差し引いても、『永遠の0』の方が良くできています。
 
高倉健は、その訃報が海外に知られる際に、『日本のクリント・イーストウッド』と紹介された」と、前に書きました。健さんとイーストウッドの共通点は、制作スタッフが固定していることにもあります。イーストウッド監督作品が、自ら設立したマルパソ・カンパニーのスタッフ中心で作られているように、健さん出演作品のうち、脱任侠映画以降は降旗監督と木村カメラマンによるものが、ほとんどです。両者ともスタッフとの信頼関係を重んじる男なのでしょう。
 
鉄道員(ぽっぽや)』から本作を経て、『単騎、千里を走る』に至るまでの健さんのフィルモグラフィを見ると、健さんは現代日本人が嫌になったのかと思ってしまいます。『鉄道員(ぽっぽや)』には、古い日本人へのノスタルジーがあります。本作では特攻で散った韓国人の遺族に誠意を伝え、『単騎、千里を走る』では言葉の通じない中国人と心の交流をします。健さんの映画には「不器用な男が誠意を伝え、他人と心を通わす」という黄金パターンがあります。日本的な美徳を失った現代日本人に、不器用なやり方で誠意を伝え、心を通わすことができるのか。それを考え、健さんは映画の中で現代日本人と距離を置き始めたのだと思います。
 
本作を「韓国マンセーな反日映画」と脊髄反射的に罵るのではなく、健さんが寡黙な態度で現代日本に示した問いに気づき、日本人らしさについて省みるべきではないでしょうか。
 
★★☆☆☆(2015年1月25日(日)テレビ鑑賞)
 
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Yahoo!ブログ「多趣味で週末は多忙」http://blogs.yahoo.co.jp/hi6chan2001/44443894.html
 

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