【映画評】ネットワーク | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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ハワードがキャスターを務めるニュース番組は視聴率が低下。テレビ局UBSはコングロマリット企業によって買収され、局内の異動も行なわれる。そんな折、ハワードは解任されることに。疲れきった彼は番組の中で自殺を予告。しかしこの一件によって視聴率は急上昇。その後も野心家の編成主任ダイアナによってハワードの番組は大人気を博すが……。テレビ業界の裏側でうごめく人間たちの愛憎と欲望を描く衝撃作(映画.comより引用)。1977年公開作品。監督はシドニー・ルメットで、出演はフェイ・ダナウェイ、ウィリアム・ホールデン、ピーター・フィンチ、ロバート・デュヴァル。
 
テレビ業界を舞台に人間の欲望を描く社会派作品です。視聴率競争に狂騒するテレビ業界の姿は、現在と変わりません。狂人であるハワード(フィンチ)が、テレビで「預言者」として祭り上げられます。そして視聴者もそれに同調します。日本のテレビでも、メディアが火を着けた人気者は、社会不適合者が多いです。ビッグダディなんか、そうですよね。『キング・オブ・コメディ』も、そのような時代の狂気を皮肉っています。
 
テレビ業界の裏側を描く社会派作品は、日本映画で作ることができるでしょうか。難しいと思います。何しろ現在の日本映画界において、テレビ局は大スポンサー様ですからね。辛辣な自己批判は嫌がるでしょう。志の高い映画人が頑張っても、テレビ局が取材も撮影も宣伝も協力しなければ、映画としての力が弱い仕上がりになります。『白ゆき姫殺人事件』はかなり健闘していますが、湊かなえの原作小説というワンクッションがありますし、テレビの仮想敵であるネットの方を醜悪に描くという形で、ご機嫌を伺っています。
 
テーマとしては好きな作品ですが、演出が真面目すぎるのが難点です。役者の熱演は素晴らしいですが、ルメット監督はそれを抑制した方が良く、もっと言えば、本作はブラックコメディに仕上げた方が良かったと、私は思います。笑えない状況を笑いに転化することで、より状況の深刻さを際立たせるという効果があるからです。『博士の異常な愛情』は、核戦争による人類全滅の危機という、最も笑えない状況をブラックコメディに仕上げた名作です。真面目なドキュメンタリーの世界にブラックコメディのセンスを持ち込み、成功を収めたのがマイケル・ムーアです。ムーア監督の『華氏911』がカンヌ映画祭パルムドールを受賞した時に、審査委員長を務めたクエンティン・タランティーノも、ブラックコメディ的センスの持ち主ですから、納得です。
 
私の好みとは少しズレますが、役者の熱演に見入ったり、テレビというメディアについて考えたりすることができる良作ではあります。
 
★★★★☆(2015年1月17日(土)DVD鑑賞)
 
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