ずっと前から疑問に思っていたことを書きます。
年配者になると、日本人が演歌好きに転向するという謎です。
大晦日の「NHK紅白歌合戦」では、必ず大勢の演歌歌手が出場します。年の締めくくりに演歌が伝える日本の心でしみじみしようと理由で、年配層の視聴者狙いのキャスティングだと言われがちです。
ちょっと待ってください。現在の年配層(六十代前後)は、いわゆるビートルズ世代ではないのですか? 洋楽のロックの洗礼を受け、あるいは邦楽のGS、フォーク、ニューミュージックを聞きながら、青春を謳歌していた世代のはずです。その時、演歌や歌謡曲はダサくてカッコ悪い音楽として嫌っていたのではないですか?
別の分野に目を向けると、「主婦層受けが良い」という概念は、時代とともに変化しています。昔だったら、家庭的で上品なタイプが主婦層受けが良いとされていました。当時の主婦が婚前に培ってきた価値観からすれば、それが正しい女性像で、セクシーさを前面に出すタイプは「ふしだらで下品」という理由で嫌われていました。しかし、現在の主婦層(四十代前後)は、婚前にバブル以降の時代を経験していますので、家庭に納まるより外に出て、社交的に活動するタイプの方に共感できるようです。「若い頃の自分が何を着ていたか」を思えば、セクシーさにも寛容になっています(主婦層のファッションは、昔より肌の露出度が高い)。企業やマスコミが主婦層をターゲットにする場合、その主婦像は昔の良妻賢母ではないということが分かります。
それに比べ、「年配層は演歌好き」という固定観念は変化することなく、未だ強力なようです。日本人には演歌好きのDNAが潜在し、それが年配になると発現するのでしょうか? それとも演歌歌手を抱えた大手芸能事務所への配慮から、NHKのある渋谷界隈のみで流布する迷信なのでしょうか?
私ごときでは手に余る未解決問題です。