サッドヴァケイション | 圭一ブログ

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圭一のブログです。1984年宮崎県生まれ

サッドヴァケイション プレミアム・エディション [DVD]/オダギリジョー,石田えり,宮崎あおい

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浅野さんが、宮崎あおいが、オダギリジョーが北九州弁で喋る。それだけで観る価値がある!

暴力、仕事、家族、家族の絆。そんなものについて考えさせられました。

●あらすじと主観

自分を捨てた息子(浅野さん)と再会した母親。新しい夫は運送業を営んでおり、家の裏には社員寮があって、社員や新しい息子も一緒に住んでいてあたかも一つの家族のような。
浅野さんは以前、中国からの密航者を手引きして、地元の中国マフィアに相棒を殺され自分も危ない立場にいる。密航の船の中でケンカで殺された父親、一人残された小さな男の子。それを浅野さんは引き取る。中国孤児、障害を持つ女の子、ペットのウサギ。そんなものを抱えている。運転代行の仕事をしているとき美しいホステスと出会い愛し合うようになる。要するに、いろいろ厄介なものを抱え込んだ一人の人間だ。

かつて夫と浅野さんを捨てた母親は、その全てを今の自分の家に受け入れる。そればかりか、運送会社の跡取りに浅野さんを据えようとさえする。
一方で浅野さんは、その会社で働き家族の一員のように溶け込みながらも、母親に復讐しようと思っている。母親は自分の築き上げたコミュニティの中に自分の欲望のために浅野さんや浅野さんの抱えているもの全てを取り込もうと思っている。距離を置いて眺めれば、親子の和解、邂逅の物語のようでもあるが、憎しみとかエゴイズムが渦巻いていて、当人たちはその感情や判断を憎しみとかエゴイズムだと認識してはおらずそれが不気味だ。

新しい息子(種違いの浅野さんの弟)はボンボンで、ちょっとぐれている。浅野さんは万引きで捕まり自宅謹慎中の弟にバイクのキーを渡す。「誰もお前を必要としていない」と家出をそそのかす。
まるで、それで復讐は果たされたかのよう。
しかし弟は、家出の直前に浅野さんが面倒を見ていた障害を持つ女の子をレイプする。さらに弟は浅野さんを人気の無いところに呼び出して鉄パイプで殴りかかる。格闘の末、浅野さんは弟を殺してしまう。

弟の葬儀に現れた、浅野さんの恋人。子供を腹に宿していた。
母親と初対面。母親はその顔を見るなり、自分の着物を着せて「この家の女やったら、ちゃんとしたものを着らんと」と、当然のように、当然のように自分の築き上げたコミュニティの中に迎え入れるのである。
なんたる図々しさ、懐の深さとも言うのであろうか。温厚な新しい夫も、さすがに激昂するが気にしない。九州の女は強い・強すぎると思った。でもきっとその真意は自分の帝国を守るというかエゴイズムなのであって、人間は、全ての時代の母親というものは、こうして「家族」を守り続けてきたのだろうと思うのである。

刑務所で母親は浅野さんに告げる。「あんたが出てくる頃には、子供は小学生になっちょるよ」と。堕ろせ、と浅野さん。
そんなことはさせない。あんたが出てきたら、私とあんたと、あんたの女と子供で一緒に生きていくんよ、と母親。

浅野さんは復讐をしたはずなのに、逆に何もかも奪われてしまった。
これは、一人の男がマイナスのスタートから家族を創りあげて、母親に復讐することで人生を清算しようとする物語であり、最後の最後で逆に最も憎んだ家族の一員とされてしまう物語である、という風に思った。