謝花:
練習終わりで疲れているかも知れませんけど、よろしくお願いします。
2人:
いえいえ、全然。
謝花:
楽器を始められたのは、いつでしたか?
伊藤:
中学校1年生の吹奏楽部に入ったんですが、、実はトランペットが第一希望で、その次にフルートで、オーボエ(以下Ob)は第3希望だったんです。
で、希望アンケートを書いたら(入部希望の部員が)1学年40人くらいだったのに、Obって書いたのが私だけで…
久津那:
え、どんだけいなかったの(笑)。
謝花:
でも(他の希望が)トランペットとフルートでしょ?二大人気楽器なんで。
伊藤:
王道ですからね、木管と金管の。
久津那:
そうかー。
伊藤:
で、他に(Obと)書いた人が1人もいなくて。消去法というか、その後面談して決まったんです。それで今まで続けているとは、その時思っていなかったですけど。
謝花:
ちなみに楽器はその後買ってもらったんですか?
(当時、中学校には楽器が無かったらしい)
伊藤:
買いましたー。中古の楽器を親に買ってもらって。
謝花:
すごい!
伊藤:
でも(創立が)割と新しい学校で、楽器の備品がそんなに無かったから、大体の生徒は自前で買う傾向にあったんです。入部した当時から買うってのはなかなかないと思うんですけど。
久津那:
弦楽器は今でこそレンタルしてから…ってできるんですけど、私が小さい頃は教室の先生や他の生徒が持っていた分数楽器を借りたり買ったりしていました。
でもやっぱり人の楽器だし、壊したら弁償しなきゃいけないから、私の生徒は皆さん買われていますね。その意味では、バイオリン(以下Vn)を習わせようっていう家は、そもそも(経済的な)余裕がある家庭なんだとは思います。
伊藤:
その親が…
久津那:
(笑)あ、でも私も昔使っていた分数楽器を生徒さんに貸してあげたりして、その時は数年しか使わなかったものだったのが、巡り会いが来たり。
伊藤:
面白いですよね~。
謝花:
そういう縁はすごく素敵ですね。久津那さんは?
久津那:
母が音楽を嗜んでいた家系で、私にもピアノかVnをさせたかったみたいなんですね。で、私が3歳くらいの時に、バイオリンのおもちゃ?弦に弓を当てるだけで音楽が鳴るみたいなのを…
伊藤:
あ~、持ってました!
久津那:
そう!あれを好きで遊んでたみたいで。で、どうやらピアノは腕は動くけど、あまり身体が動かないからか、見た目的にあんまり魅力を感じなかったみたい。でもVnは動く。その姿に憧れを持ったようです。
それと小さい頃からコンサートに連れてってもらったのもあると思います。それでやりたいって言ったのがVnで。でも当時はまだ小さかったから5歳から(始めた)。
伊藤:
自ら選択した訳ですね、Vnをやりたいって。
久津那:
でもその時は何となく言っていただけでした。
可能性なんていくらでも広がる
謝花:
プロを目指すキッカケというのは、何かありましたか?
伊藤:
元々は教師志望だったんですけど、最後まで進路を決められずにいたんですね。音楽は辞めたくない、演奏も諦めたくない、勉強はしたいと思って、最後まで選択肢のある大学に入りたいと思って教育大学に入ったんです。
3年生の時に教員採用試験の勉強をしていたんですけど、教師になったら楽器を専門にはできなくなるって思って。
その時にやっぱり楽器をしたい、演奏者でありたいって。で、私は元々鍵盤もしていたんですが、Obは辞めたくなかったけど鍵盤も諦めたくなくて、全部が叶う選択肢って何だろうと思った時に、ヤマハの講師なら子供達に教えつつ鍵盤にも触れて、かつ自分も空いた時間でObの演奏ができると考えて、滑り込みでヤマハに入って今に至ったんですね。
そういう意味ではプロに至っているというかは、プロとしてやっていけるように目指している感じですね。「なった」っていうよりは、並行しながら生きる道を探索している最中です。
久津那:
中学の時に進路を選ばなきゃいけないってなった時に、普通の公立高校に行くのが当たり前の環境の中で、私は自分にしかできないこと、人と違うことをしたかったんですね。
で、その年の県西の定期演奏会で第九をしていて、それを聞きに行った時にカルチャーショックを受けたんです。あれはプロがやるものだと思っていたのに、高校生がやるのかと。
その時に私も弾きたいって思って県西を受けたんですけど、それまで同い年でVnをしている人がいなかったから、入学したら衝撃の連続でしたね。初めてのオーケストラやアンサンブルに加えて、同年代で巧い子もたくさんいて、お互い切磋琢磨して…。
そうして世界が広がれば広がるほど「知らなかった方が苦しくなかったかも知れない」と思うほどの音楽人生の始まりでした。本当に。
謝花:
上にが上がいるというか…
久津那:
そう!コンサートとかヴァイオリニストってすごく華やかなイメージがあるから、そうなりたいって思う気持ちもある反面、理想と現実のギャップに苦労したんですね。
中学までずっと同じ先生に習っていたので、プロになるための専門的な勉強はあまりしてこなくて、何となく弾いている程度の技術で入っちゃったから大変で。
試験とかで頭が真っ白になっちゃうし…楽器を弾くのは好きなんですけど、評価されるのがすごく苦手で、試験とかコンクールとかは本当に弱かったです。
久津那:
それで、そこからどう今に繋がるのかなんですけど、理想と現実のギャップがある=もっと自分は上手くなれると思って、もっと勉強したいと京芸に入りました。
しかし卒業した時に、父からは遊びで楽器をやっていたって思われていたんですね。普通は大学を出たら社会人だから…
謝花:
家を出て、一人暮らしして、自立しなさいよ、と。
久津那:
そう、でも母は応援してくれていたんで、いきなりその板挟みでした。父にvnを遊びだと思われていたのもショックだったんですけど、その時にVnで父を黙らせようと思って…。初めはそんな感じです。
で、最初は音楽の仕事がないから早朝にパン屋さんでバイトしながら、頂いた音楽の仕事は全部やって。2年くらい経って演奏活動で忙しくなってきた時にバイトも辞めたんですけど、その時は一般常識が無かったから勉強にもなりました。両親とも応援してくれていたら今の自分は無かったと思うんです。
久津那:
でも結局のところ、プロになりたいからじゃなくて、自分のした演奏活動で(経済的なだけではなく、縁も含めた)結果に繋がるのが本当に幸せに感じます。
でもそういうのって、自分が動かないと広がっていかないんです。積極的に視野を広げていけば、可能性なんていくらでも広がるんだなって実感させてくれるので…。
伊藤:
刺激的ですしね~。毎日違うことさせてもらえますし。
久津那:
本当に!でも、プロとアマチュアの違いで言うのなら、プロは音楽の楽しさを提供するものだから、どれだけ演奏する時に自分に負の要素があっても、楽しさを演出するために全力を尽くすって言うのは気を付けていますね。お客さんのいる前では、夢を壊すような真似はしたくないなと。それは意識しています。
Vn:久津那 綾香
期待や気持ちに応えられるように
謝花:
ココからは今回の演奏会についてお伺いしたいんですけど、
最初にこの話を受けた時に、率直にどう思われましたか?
伊藤:
もう、嬉しいと言うか、私で良いのかと言うのが一番に来ましたね。
実は初見大会の時からそう思っていたんですが、しかも謝花さんがObだから、(他にもOb奏者を)たくさん知っているであろうはずなのに、その中から私に声を掛けて下さった時は有り難さと共に、恐怖心というか、そう言うのがすごくあったんです。
でも久津那さんも仰っていましたけど、私もオファーがあればできる限り受けたかったのと、実力不足かも知れないけれど、これを逃したらもう一生来ないかも知れないと思ったので。
伊藤:
あと、アマチュアの知り合いも多かったんですね。この2年くらいでアマチュアの方との交流も多くなったんですけど、皆様はプロと違って色々な職業に就いていたり、中には学生もいるし。
久津那:
視点が違いますよね。
伊藤:
そうなんですよ!すごく色々な知識も持っているし、本業が別にある方が集まって演奏すると言う輪の中に入らせて頂けるのが楽しくて、しかもソリストとして、と言うのがとても嬉しかったですね。
久津那:
私は(今回の依頼が)自分にできるかはわからないし、ハードルが高いことも分かっていたんですけど、そうであるほどモチベーションが上がるみたいで(笑)、呼んで頂いた以上は(ソロとコンミスの両立という)大役でもこなせられるようになりたいと思い、お引き受けしました。
それに、そんなのお金出したってできることじゃないですしね。同じ気持ちを持つ人が集まらないと…
謝花:
確かに(協奏曲のソリストをすることが)プロでもなかなか機会が無いとは聞きます。オーディションを通って、高いお金を払ってプロオケに伴奏してもらってソリストするとかはあるみたいですけど…。
久津那:
でも今回意外だったのは、ソリストとしてと言うのもですけど、コンミスとしての依頼でした。経験はあるんですけど、勉強したこともそんなになかったのに…。
光栄でしかないですね。他にいっぱいVnの方いるのにって。このような大役に選んで頂いた気持ちに応えられるように頑張りたいと思います。
謝花:
今回ソリストとしてお二人に出て頂くということでバッハを、
まぁ編成としてはコレしか無かったというのもあるんですが、この曲の印象はどうですか?
久津那:
曲としては「これぞバッハ!」とか典型的バロックっていう感じじゃなくて、VnとObのための珍しい編成の曲というイメージですね。専門の楽団以外ではあまり取り上げられない中で、私たちなりの解釈でバッハを演奏したいです。
後は今回参加して頂ける皆様に楽しいと思えるような演奏をしたいですね。
眠いテンポじゃなくて、躍動感ある感じでね。
伊藤:
周りで現代音楽とか、春の祭典をしたい!みたいな話をアマチュアの方から聞くんですけど、逆にバロック時代の魅力をこの曲を通して知って欲しいです。
バロックって演奏するオケは決まっていません?
謝花:
殆ど…。例えばバッハゾリステンみたいな、そういう名前のところばっかりですね。
伊藤:
そういうところってそのオケなりの独特の味付けや演奏があるんですが、そういうものの真似じゃなくて、バロックならではの様式や楽器の特性というか、素材そのままの味みたいなのを楽しんで頂ければなと思いますね。
Ob:伊藤 早紀