【前半はこちら】


謝花

お互いの印象というのは如何でしたか?
伊藤

印象・・・これ恥ずかしいやつや(笑)
久津那

そうそう(笑)
伊藤

めっちゃ可愛いって思いました。
久津那

ええ(笑)

ありがとうございます(照)。最初会った時はショートじゃなかったよね?
伊藤

そうそう。
久津那

で、初見大会の日に会ったらバッサリ切った子がいて…
謝花

誰やねん、みたいな(笑)。
久津那

それです(笑)。ガラッと印象が変わってて、すごい大人っぽいって思いました。
伊藤

私は(初見大会の)打ち合わせの日に2人が先にいたのを見たのが最初だったんですけど、その時まで存じ上げなかったから、「めっちゃ綺麗な人がいる!」って思ったんですけど…
久津那

ほんまか(笑)。
伊藤

そう(笑)。すごく凛としているというか、姿勢も良いし一見シャキッとしているけど、

話したら柔らかい喋り方だし、出来た人やなと。
久津那

出来てないよ(笑)。でも素はフニャフニャなんですけど、割と人に良く見られたいって思うんで、自分の演奏にも結構プレッシャー掛けちゃうんですね。素の自分で良いって言うならそんなに緊張もしないと思うんですけど、何というか、欠点みたいに思って見られたくないってなって自分で追い込んでプレッシャーに潰されちゃったり…今でこそある程度素を出せるようになりましたけどね。

伊藤

しっかりされているというと一言で終わっちゃうんですけど、音楽家の抱えているモヤモヤ感を凄く端的に表してくれるんですね。凄く憧れます。
久津那

早紀さんはいつでも自然体ですよね、飾らない美しさがあるというか…
伊藤

カウンターがきた(笑)
全員

(笑)
久津那

でも自然体だし、あんなにショートカットが似合う人っていないなぁって(笑)。

それにObをする人に不真面目な人はいないと思うんですよね。
謝花

…僕、不真面目ですけど。
伊藤

いやいや(笑)
久津那

A型気質っていうのかな?まずリードの管理ができない人はobできないじゃないですか。こんなんやってられるか!みたいな人には絶対できないから。

粘り強さというか、芯があるイメージはありますね。
伊藤

どうだろう?でもObにしては適当というか…Obって暗いイメージってありませんか?
謝花

言われますね。ずっと俯いてリード削ったりしますからね。
伊藤

そうそう。そういうイメージを持たれやすいんですけど、Ob奏者にしてはプラス思考だし、珍しいタイプだとは良く言われますね。
久津那

多分(出身)大学によってもカラーってあると思うんですけど、早紀さんの場合は良い意味で音大生っぽくないなぁと思いますね。

お嬢様感がないというか、敷居を感じさせないというか、壁を感じない気がします。
伊藤

嬉しい(笑)。どうですか?
謝花

なるほど。でも仰りたいことは何となくですけど分かります。どちらかというとお嬢様っぽいと思うのはVnとかピアノあたりの、英才教育しないとプロになれないみたいな楽器ほどそういう傾向は多いかな。
伊藤

楽器がね~。
久津那

小さい頃からのレッスン代とか考えても、そうですよね…。
謝花

逆に管楽器だとある程度身体ができないと難しいし、フルートならまだしも、先ほども仰っていましたけど、Obとかは残りクジ引かされてやる人って結構多いんですよ。

自分から選んで(Obをやる)っていうのはそんなにいないので、そういう意味では選ばれた人というか、高嶺の花みたいな感じはないかも知れない。

久津那

言い方を変えると、ピアノとかVnは、小さい頃からするから、それしか知らない事が多いんですけど、早紀さんは音楽以外の一般常識を知った上で音楽をしているなと思いますね。

今日も話していて感じましたけど、色々な選択肢がある上で選ばれているから、それこそ音楽しか無かった人とは、絶対に違った視点で音楽できるはずなんです。凄く広い視野の中で見られるのはとても良いことだと思います。
謝花

ある意味残酷だとは思いますね、音楽しか無い方って。

裏の方というか、例えばオーディションに落ちたりとか、それでも巧い人はいっぱい居るはずなのに、表で見ない方が多いというのを聞くと、僕みたいなサラリーマンって楽だなと思います。土日はちゃんと休みだし、保険も給料も保証されていて、その上で趣味で好きに音楽できるのは、ある意味気楽だなと思いますね。

久津那

でも人の数だけ価値観はありますし、音楽しかない方の中にも、経済的に恵まれていて、親から何も言われず、自由に音楽活動ができるっていう人もいますからね。

でも私はそういう人とは一緒にされたくはないです。
伊藤

ある程度覚悟を決めてますからね、荊の道ですけど。
久津那

でもやっぱり環境は大きいですよ。その意味でも私は親にというか、環境には感謝です。

だって自分が子供に同じ事できるかって言われたら無理ですもん。
謝花

もし子供がいて、楽器やりたいとかプロになりたいって言われたら、やっぱり躊躇いますか?
久津那

実際にその状況になって見ないと分からないと思うんですけど、もし子供が自分より大事な存在に思えるんだったら、多分Vnじゃなくても一生懸命にがむしゃらに働いて稼ぐと思いますね。子供の夢を実現させてあげたいって。
伊藤

私もですね。
久津那

でもやっぱり自分の人生は自分のものとして、もし将来的に家族を持つ時になったとしても両立できればなと。
伊藤

難しいですね…。
久津那

難しい…。

 

 

 

  色んな事をしている人は色んな考え方ができる


謝花

今回はソリストやコンミスとして演奏する訳ですが、もちろん今回の本番で終わる訳ではなくて、奏者のキャリアとしては一種の通過点でしかないと思うんですね。

その先、これからの目標があれば教えて頂きたいです。
久津那

今は実家に住んでいて、親が応援してくれているので自分の演奏活動に重点を置いてできているんですが、それ以外の事については母がしてくれているんですね。で、母曰く、私がある程度音楽で自立できるまでは自分の面倒よりは奏者として安心できる水準まで達して欲しいと。そうなれば比例して仕事の質も上がるだろうし安定もするだろうと言うんですね。

そう言う意味では親を安心させられるというか、他のことまでに気が回ったり生活ができるくらいに人としても技術的にもレベルを上げたいなと。

久津那

それと、今お世話になっている先生が、「今はある程度頑張って、いつか違う人に、学んだ技術を教えて欲しいんだ。自分が今教えている事を、皆さんが人に教えられるようになって欲しい。」と言ってくださっているので、今後は自分が学んだ事を誰かと共有していけたらと思っています。

根本的な生活スタイルとしては変わらないですが、今回は間違いなく自分にとっては(コンミスとソリストの二刀流という)前代未聞だし想像付かないんですけど、むしろ楽しみです。その後にどんな自分が待っているんだろうって。自分のキャパが広がるんじゃないかって。

伊藤

私ってすごく欲張りに生きようとするタイプなんですね。楽器も講師も演奏もやりたいし、最近はちょっと歌も歌わせてもらっているんですけど、若干マルチプレイヤーみたいな。
久津那

すごい!でも海外の演奏家って、複数掛け持ちしたりしてたりしますからね。
伊藤

へえ~そうなんですね!

で、私がどこまで出来るかは分からないですけど、1つの楽器を見つめるだけじゃなくて、全部…弦楽器とかは出来ないですけど、色々な所に長けていると、結局は一つに繋がって、凄く視野が広がると思うんですよ。

それで回り回って、またObに関して違う見方ができるかなと。

それは今やっている音楽活動でも結構実感するんですね。
伊藤

もちろんOb以外に時間を割かなきゃいけないから分散されますし、多分Obしか知らない方が技術的には良くなるんでしょうけど、その中でどれだけ自分がObを持って良い演奏をしていけるのか?っていうところには来ているかなと。

でも最終的には現在の生活を続けてながら、一番好きなObの技術を磨きたいですね。めっちゃ欲張りですけど。
久津那

それって、さっき言ってた「色んな事をしている人は色んな考え方ができる」ってのと一緒ですよね。1つのことだけを見ている人って、案外なかなか先に行けないんですけど、色んな方向から見られる人は違う発想ができるから、Ob以外で培ったノウハウや考え方で壁を乗り越えられたりできて、案外(到達が)早かったりするんですね。それって人間力みたいなものですよね。私も何でVnを続けているかって考えたら、それを通じて自分を成長させたいって思ったんですね。結局は自分を成長させる手段がVnだったってだけで。
伊藤

人が大事と言うか、人と関わりたいって思うから、自分も磨き、それを人に伝えたり、人に聞いてもらって、それによって人が癒されるようになりたいですね。元気になると言うよりは癒されて欲しい。でもそれって相手がいないとできない事で。そう言うことがおばあちゃんになってもずっと続けられるようになりたいなと思います。

 

 

謝花

では最後になりますが、聴きに来てくれる方や(対談を)読んで頂いている方にメッセージをお願いします。
伊藤

うーん…
久津那

でも第1回と銘打っているってことは、(diversEnsembleを)続けるつもりで始められていますよね?
謝花

基本的にはそうですね。
久津那

もちろん2回目以降どうするのかは私も知らないですけど。
伊藤

たくさんの拘りが詰まった演奏会だと思うんですよ。すごく考えて作られていて、他にない事をしようと思ったけど前例が無いから自ら立ち上げようと思われたと思うんですけど、だからまずは観に来て実感して欲しいって思いますね。初めての試みですし。

久津那

独りよがりなコンミスじゃなくて、普段関わる機会のない皆さんと一緒に創り上げた音楽を共有する時間をお楽しみ頂ければなと思います。


謝花

今日は長丁場でしたが、どうもありがとうございました!
2人

ありがとうございました~。

 

 

 

 

 

2017年11月20日、宝塚市内某所の会議室にて対談。

 

聞き手 / 文字起こし・編集:謝花 旭(Akira, Syahana)

diversEnsemble 主宰/プロデューサー。

兵庫県出身。13歳でホルンを始め15歳でオーボエに転向、広島大学理学部在学中より学内外の団体に積極的に出演。帰郷後、大阪市内のソフトウェアベンダーにてエンジニアとしてシステムの研究・開発に従事する一方、アマチュアのオーボエ奏者として京阪神にて活動している。オーボエを下田琢己、中江暁子各氏に師事する他、広田智之、カレフ・クリウス氏をはじめ国内外の奏者より薫陶を受ける。