スノーデン | 映画物語(栄華物語のもじり)

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「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。

★★★★☆

 ツイッターだけが政府に媚びなくて暗に株を上げるという話。

 

 他人のフェイスブックを覗き見るのだって余裕だよ! だってファイスブック社が協力してるんだもん! という内容の映画である。いや、マジで。

 日本では私のような一般人レベルではあんまり衝撃的な話として浸透しなかったように感じるのだが、2013年にアメリカでは「国家が国民を監視していた(冗談抜きで)」というSFアニメのような事実が判明した。それを告発したのエドワード・スノーデンというアメリカ国家安全保障局に勤務する29歳の青年だった。

 日本で「国家が国民を監視する」という話でいえば、有名どころでは伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』がある(フィクションだけど)。

 

↓小説は本屋大賞受賞。執筆に集中したいからもう直木賞候補にエントリーされるのもヤダと言ったキッカケの作品でもある(そんな言い方してないけど)。

↓映画はまあまあといった感じですかね〜だいぶ前に観たから記憶薄いけども

 

 『ゴールデンスランバー』のあらすじとしては「首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の二日間の逃亡劇」といったところなのだが、前提の舞台設定として「街のそこら中に監視カメラが設置された日本」というものがある。劇中で監視カメラが設置された背景として「陰惨な犯罪が起こったため、その抑止として」「だが一度設置されれば、違う目的でも使われ始める」みたいな説明がなされていて、ああ本作の話と近いな〜と感じた。しかしながら、本作の方が遥かに規模がでかいしやり方もえげつないので、事実は小説よりも奇なりとは真に言い得て妙である。街中にある監視カメラで監視しているなんてレベルでは全然なく、むしろ「それくらいなら、まあいいじゃん」と思えてくる。いや、実際。

 

 劇中で示された、NSA(国家安全保障局)職員があっさりとやった監視例としては、「一般人の開きっぱなしのパソコンにアクセスして、パソコン内蔵カメラで部屋を盗撮(相手は女性でカメラの前で着替えを始めた)」とか、「グーグルのすごい版みたいな検索エンジンで、友達登録してないフェイスブックのページを見るのも余裕っち」とかである。その様を目の当たりにしたスノーデン自身は、自宅のパソコンの前で同棲中の彼女とあっはんちょめちょめをすることに恐怖するようになる。いや、当たり前だが。もしかしたらそのプレイに逆に喜ぶ人もいるかもしれないが、民主主義の原則は多数決なので、大多数はそんなことをされたら日には特に一部分の元気がなくなってしまうかもしれない。私は一体何を言っているんだ?

 

↓もしかしたらコメダでクリームソーダを飲みながらこの記事を書いていることもアメリカに見られているかもしれないぜ!(無益〜)

 

 ストーリーとしては、愛国心溢れるスノーデンが国のためになろうと最初は軍で頑張ってたんけど両足を折ったもんだから今度はCIAにしたらコンピュータの才能が開花しちゃったけどCIAのやり方が汚くて嫌気がさしてきたもんで今度はNSAに入ったらなんかそこでもヤになっちゃったという話である(雑)。そうして国家機密の暴露へと繋がっていくわけである。

 前述のように盗聴・監視は従来のSFよりもよほどえげつなくて、世界規模である。なんか劇中では「監視の規模がロシアよりアメリカの方が巨大だ。倍以上ある。これが正常なことなのかどうか、みんなの意見を聞きたい」みたいなやりとりを信頼をおくNSAの仲間たちと交わすシーンがあるのだが、問題そこ? というツッコミを禁じ得ない。自国民のことまでも監視しているなんて信じられない……という論調なわけだが、そもそも世界中の監視カメラやらネットワークやらを傍受できていること自体が怖っ! なわけで。ちなみに上述のフェイスブックだけでなく、スカイプやヤフー、マイクロソフトやグーグルやあの孤高なイメージがあるアップルもNSAに協力していたことが公式に判明しているので、なんなら現代のインターネットのほぼ全てを掌握していたといっても過言ではないかもしれないわけである。主たるソーシャルメディアではツイッターだけが協力してなかったので、これからはツイッターを頑張ろうと思います(単純)。

 ちなみにこのスノーデンが開発したマルウェアで日本のインフラも掌握していることが劇中で示されているので、日本オワタね。日本人はあまり気にしないんだけど、そういうこと。

 

 スノーデンは内部告発を香港から行い、追っ手が迫るなか急いでロシアに向かう。その途中、アメリカからパスポートを無効にされ「無国籍」な人間として空港から出られなくなるのだが、最終的にはロシアに亡命することとなる。社会主義国家こそ自国民に対してもっとえげつない監視をしてないの? と思ったりするのだが、その辺のツッコミは劇中にはなかったのでなんとなくハッピーエンドである。本当はロシアを経由してエクアドル等の第三国に行こうと計画していたらしいので、その辺は不本意なのかもしれないが。亡命のためにロシアにスノーデンが得た技術とか知識とかを提供していないとは1ミリも思えないですからな〜

 

 ちなみに監督のオリバー・ストーンはプーチン大統領にインタビューを行い、スノーデンのことについても質問している。インタビューの中でプーチン大統領は「本当はスノーデンを引き取りたくなかった。アメリカと不要な摩擦が生まれるだけだから。が、アメリカはロシアの犯罪者の身柄引き渡しに応じないし、ロシア国内で犯罪を犯したわけでもないスノーデンを引き渡す理由がない。アメリカはスノーデンを確保したければパスポートを無効にするのではなく飛行機を緊急着陸させれば良かったんだ。焦ってたんだろうけどさ」というようなことを語っていて、正直すぎて笑える。

 

↓いくつかに分かれているインタビュー動画なので、この動画で上記のことを述べているかは忘れちゃった。。。

 

 劇中でスノーデンが述べる最も恐れていたことは「国民の無関心」であった。自分がこの「国家が国民を法や憲法を犯してまで監視している」という事実を告げても、何も起こらないのではないかということを危惧していたのである。

 しかしながらスノーデンが行なった一連の内部告発は国民のプライバシー意識を高め、テクノロジー業界の昨今の風潮である「プライバシー最重視」の礎を築いたと言われている(フェイスブックは以降も何かとだだ漏らししてたけど)。

 で。

 考えたいのは、スノーデンが取ったこの行動が是か非かということなのであるが——

 伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』における日本中の監視カメラの存在もそうであるように、始まりは「悪しきことを防ぐため」であった。アメリカのこの監視体制構築におけるそれは、具体的には「9.11」である。劇中でも、スノーデンたち新入りの情報操作担当CIA職員に向けて上官が「『9.11』が再び起これば、それは君たちのせいだ。前回の『9.11』が私たちの責任であったように」と語りかけるシーンがある。監視社会の大義名分は、戦争やテロの抑止のためなのである。

 それでももちろん、劇中ではスノーデンの取った行動が国を変え、国家による非合法な監視から国民を救ったと描かれる。私としても、現在鼻くそをほじりながらこの文章を打っているところをパソコン内蔵のwebカメラを通して見られているのはそんなに気持ちの良いものではないと素直に思う。

 が、きっと、もう一度「9.11」が起こるなんてことがあったとしたら、いろいろと風向きが変わるんだろうな、とも思うのである。それにNSAにしたってCIAにしたって、正直「今は改めました」と言っても本当にもうやめているとはまったく思えないし。今まで構築した財産を捨てるなど考えられないし、それが利用できる状況にあるのなら使うと考える方が自然ではなかろうが。上に挙げた大手企業の面々とてどうだかな〜と思うし、何より大統領はなんといってもあの方である。いろいろやりにくくはなったのかもしれないが。

 

 是非を問うならば、「人間の信条としては正しいが、理屈の通用しない相手に遅れを取る要素を作った」という点で、単純な是とはいえないような気がしなくもないようなそんな春の日の夢の如し(何が?)。その辺を含めてもやもや〜としている現在なう。

 映画作品としては非常によくできていて、考えさせられたり驚愕の事実があったり(フェイスブックの中身をただの検索で見てたのはびっくりした。フェイスブックやってないけど)、ハラハラドキドキのシーンがあったりと、とても楽しい。私みたいにめんどくさいことを考えなければとてもオススメの一本である。

 

↓ジョセフ・ゴードン・レビットが主演なのも良いよね! 良い味出してました。私もこんなインテリイケメンになりたいのだが、イケメンはスタートから無理ゲーなので、せめてインテリになりたいです。

 

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