グリーン ブック | 映画物語(栄華物語のもじり)

映画物語(栄華物語のもじり)

「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。

 

★★★★☆

 よく食うな〜、という話。

 

 最近すっかり映画とはごぶさたなのだが(それとなく下ネタ)、法人用チケットをいただき、それの使用期限は年度末3月31日までだったので、がんばって観に行った! タダなのに腰が重いというのは重症である。もうね、「映画を観にいったらブログを書かなきゃならん!」とか思って腰が重くなるなんて、もはや何が何だかであることよ。最近は記念メダルブログに注力している&追われているので、「余計な仕事が増える感」があってなかなか映画館に足が向かないというね……私は一体何がしたいのでしょう(それは誰にもわからなかった)。映画館の前にある二郎系ラーメン屋でラーメンを食すことを動力として頑張って行った。

 で。

 アカデミー賞作品賞受賞の本作である。アカデミー賞とはとんと相性の悪い私であるので、うーんと思いつつも、なんとなく絶賛されている雰囲気&映画から離れすぎてもはやどんな作品をやっているのかまったくわからなかったので、無難に本作を鑑賞した。

 結論から言うと、面白かった! めっちゃ丁寧に作った映画だなぁ、というのが素直な感想である。面白くしようと努力をして、それでいてアカデミックな内容で、真面目とユーモアを6:4くらいのちょうど良い味付けで調理した良作である。

 まず、白人と黒人の二人のポスターを見た瞬間に「人種差別的な問題で溝があった二人が、やがて打ち解けていく話かな」という想像をしていたが、まあ大体そんなような内容なんだけども、そう単純でもないのがやはりアカデミー賞受賞作品ということである。主人公はイタリア人、バディは黒人、舞台は60年代のアメリカ、というところがミソですな。特に、主人公が「白人だけどアメリカ人ではない」というところが。

 ストーリーとしては、バーの用心棒で生計を立てていたイタリア人の主人公が、バーが改装のため2か月間休業するということでその間無職→大食い対決で50ドルの日銭を稼ぐもそんなの毎日やってらんないよギャル曽根すごいよ(一部誇張あり)→ドライバーの仕事に応募してみたら黒人ピアニストで、人種差別意識があるからもっと険悪になるかと思いきや意外とすんなり決まるし決める(あくまでイタリア人だから的な要素がある?)→差別意識の高いアメリカ南部をツアーで回る旅なもんでもちろんいろいろあるけど逆にそれが二人の絆を強めるスパイスさ!→主人公の差別意識もすっかりなくなり、二人はもちろん大親友さ! という誰もが想像し得るあらすじではあるものの、そこにある一つ一つの要素はもちろんアカデミー賞受賞作で、とてもちょうどよい塩梅でできている。ほんと、この「味付け具合の絶妙さ」がこの作品の肝であると感じた。

 単純に、差別問題を扱ったアカデミー賞受賞作品は他にたくさんある。例えば、『クラッシュ』とか。

 他にもあるが、共通して言えることは暗い・重いということである。もちろんそれらが「作品の良さ」でもあるわけなのだが、ポップコーンをおいしく食べながら観たい! と思うなら不向きであるともいえる(私は観られますが)。

 その点、本作は主人公の陽気さ(+暴力的塩味がありますが)によって非常にポップなノリで二人のやりとりが進んでいき、ところどころユーモアある笑いが楽しめるようになっている。しかもそのユーモアも決して下品でなく、万人受け間違いなしという中辛のカレーのような味付けで、とても『メリーに首ったけ』と同じ監督の作品とは思えませんな。

 もちろん、黒人差別問題を描く作品なので、敢えて差別意識が高い南部に飛び込んだ黒人ピアニストは色々と差別を受けることになる。ただここは今までの作品にあまり見られなかったパターンで(私が勉強不足なだけかもしれないが)、「すでに世界的に成功している黒人」という特殊なポジションから、その差別を描いているのである。

 たとえば、コンサートツアーが組まれるくらいなのだから、もちろん会場では基本的に歓待を受ける。笑顔で迎え入れられ、その演奏に拍手喝采となる。

 しかし一方で、トイレに行こうとすれば笑顔で外の黒人専用トイレを案内されたり(悪気なさそう)、笑顔で通された楽屋が物置だったりと(そして最後に受けた差別で物語は大団円へむかうのだ!)、「世界的な成功を手にしたことによって差別されていないように見えても、実は土地の風習や人々に深く根付く意識によってしっかりと差別されている」という面を描き、黒人ピアニストはだからこそ差別意識の高い南部へ敢えて赴き、そうした意識と戦うことを選んだという姿が描かれる。そして主人公はすげーあっさりとそんな黒人ピアニストを何かと助ける側に付くのだが(まあ仕事だからなのだが、かなり序盤から最初に描かれたはずの差別意識が嘘みたいになくなる)、それでも黒人ピアニストの真の気持ちは理解できないまま割と終盤まで進む。

 黒人ピアニストの「(成功を手にしたことによって)黒人でも白人でもなくなった私は一体何なんだ!」という魂の叫びが、今までの差別問題を扱った作品等とは一線を画す新しい視点を示している。同時に、差別問題の根強さを示す重要な要素となっている。

 たとえ名声を手に入れようと、財産を得ようと、差別はなくならない――という絶望的な状況を描くとともに、「差別と正面から戦うことさえ許されない」的なことを描いてんですかね? どうなんすかね?(唐突な投げ出し)。 いや、難しいこと考えてたら飽きてきちゃった♡。

 まあそういう難しいことを描きつつも、基本的には二人の愉快なやり取りと深まる絆を楽しめるロードムービーとなっているので、差別問題という重いテーマを扱いながらも万人にお勧めできるという趙良作になっている。映画デートで観るものに迷ったらとりあえずコレ的な感じで観ておけばよいと思われる。けなしてません、おススメしております。

 久々に映画館で映画を鑑賞したが、やっぱりいいね!

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