海底超特急マリンエクスプレス | 映画物語(栄華物語のもじり)

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「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。

★★★☆☆

 オールスター戦というのは意外と面白くないものである、という話。

 

 私が生まれる前に製作された手塚治虫のアニメ作品である。手塚治虫作品では、ちょい役や脇役などが「スターシステム」と呼ばれる「他の作品に出て来た登場人物が違う役で登場する」という今風に言うとクロスオーバー作品的な機能で登場することがよくあるのだが、本作では各作品の主役級の人物が沢山登場する(厳密にはクロスオーバーとは違い、全く別の世界の話として登場させるので、どちらかというとキャラクターを「役者」のように使っているといえる)。この「スターシステム」の代表例が「ヒゲオヤジ」である。

 

↓ひげというかよく見ると鼻毛と化している。

 

 本作は、前述の通り主役級のキャラが盛りだくさんで登場するので、当然のことながら手塚作品を多く知っている方が楽しめる。私は『ブラック・ジャック』『ドン・ドラキュラ』『三つ目がとおる』『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』のキャラは大体わかったのだが、他は全然わからなかったので、なんだか乗り切れずに終わった。特に、主人公とヒロインがよくわからなかったので、物語終盤はもはや置いてけぼりであった。君たち何やってるの? みたいな。

 こういう作品は、「あっ! これはあの作品のキャラだ!」ということを楽しむのが主たる楽しみ要素であるので、その辺が全然わからないと、楽しみようがないのである。プロ野球を普段全く観ない人間が、プロ野球のオールスターゲームだけを観戦しても、いまいち締まりのない試合をダラダラ見ている感覚になるのと同じ感覚である。内容そのものはイマイチというあれである。

 ストーリーとしては、アメリカやら南の島やら日本やらを海底深くで列車で繋ぐという「海底超特急」という事業がなされ、マリンエクスプレスと名付けられた列車の試行運転中に車内で巻き起こる数々の事件でてんやわんやするのが前半で、後半はマリンエクスプレスがタイムスリップして幻の島「ムー大陸」にワープし宇宙からの侵略者と戦うという謎の大展開となる。観ているときも思ったが、こうして文字にしてみると同じ作品とは思えない前半と後半の内容である。ちなみにこの海底超特急は、活火山のすぐ横を通りしかも噴火に見舞われるという構造的欠陥があるにも関わらず、そこをすったもんだの末に乗り切ると「無事乗り切りました」と車内アナウンスをするだけで平気で試運転を続けるという安全確保の概念に問題のある会社が運営している。

 物語の発端としては、殺人事件である。死体が消えてなくなるという殺人事件に遭遇した私立探偵の「ヒゲオヤジ」が、テレビでマリンエクスプレスにその犯人が乗り込むところを見たためその犯人を追ってマリンエクスプレスにこっそり乗り込むのである。このヒゲオヤジが、最終的にはタイムスリップしてムー大陸に行き、宇宙人に襲われるのである。終盤になると、殺人事件とかまじどうでもよくなっていること請け合いである。

 誰もがわかるであろう登場人物が「ブラック・ジャック」である。が、あまりパッとした活躍は見せない。最後の場面で、ブラック・ジャックが残したメッセージがカギとなるのだが、「まあ、うん……」みたいな感じで終わる。この頃には話が壮大になりすぎていてそんなことには無感動なのであった。

 ラスボスは『三つ目がとおる』の主人公シャラクで、宇宙からの侵略者という設定となっている。マリンエクスプレスをタイムスリップさせた張本人であるが、マリンエクスプレスの運転手である主人公の逆襲に遭い、最終的には鉄腕アトムの自爆に巻き込まれてやられる。『三つ目がとおる』とかまじ懐かしーと思った。感想はそれくらいである。

 あと、『ジャングル大帝』の主人公レオが空を飛んでいた。ジャングルの大帝ではなくなっていた。

 何が言いたかったかというと、「四番打者だけ集めても勝てないよ」という往年の長嶋巨人軍のような作品であったことよ、ということである。四番打者を集めると、送りバントをさせることができなくなる。緻密な野球はできなくなるのである。それと同じで、キャラを活躍させることに精いっぱいで、ストーリーは二の次になっていたという残念感が漂うね、という話である。ちょっと違うか!?