ペット | 映画物語(栄華物語のもじり)

映画物語(栄華物語のもじり)

「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。

 

★★★☆☆

 ペットは飼い主のいない間に多重交通事故を起こしている、という話。

 

 バナナマンの設楽と日村はすごく好きなのだが、声優で接するのはあまり好きではないなぁ真に残念に感じた。特に設楽が。設楽、大好きなのになぁ~。

 ペットたちは飼い主がいない間に何をしているのだろう――という、「髪の毛を洗っている間は後ろに貞子が立っているかもしれない」的な謎に迫る作品のように宣伝しているのだが(なんか違う?)、実際にはそういった秘密めいた要素は少なくて、ペット達の非現実的なドタバタ劇が主たる内容である。平たく言えば、「家の中でなんか悪いことをしているのか」ということに迫るというよりは、外を大冒険する時間の方が遥かに長い。

 ストーリーとしては、飼い主と一緒に幸せな日々を過ごしていた設楽のもとに、新たに飼い主が拾ってきた日村が突然加わったもんで、当然仲違いし、それが原因で二匹ともども保健所に連れて行かれたり、ウィンナー工場でウィンナーを食い荒らして工場が営業停止処分になってもおかしくないくらいの犯行に及んだりして、最後はバスを橋の上から川に転落させて一件落着というものである(どんな一件落着?)。日本なら間違いなく緊急特番が組まれるくらいの災害・事件であるが、アメリカという国はおおらかなので、その日の夜には飼い主が返ってきて二人(二匹)抱きしめるのである。そこに、交通事故で車を失った人の悲しみやウィンナーを食い荒らされた工場主に対する無念を哀悼する心はない。でもよいのである。だってアメリカン・ジョークの世界だから。

 さて、ここまで読んでいただけたらならきっと感じとってもらえただろうが、私はこの作品があまり好きではない。一つの作品としてはそれなりに楽しめる出来栄えであると思うし、全然退屈しない展開でもあったと思うのだが、「この騒動のそもそもの原因は何なのか」というものを考えた時、なんだかなーなのである。

 設楽と一緒に平和に楽しく、愛情いっぱいに暮らしていた飼い主は、ある日突然、保健所から日村を拾ってくる。「君も兄弟が欲しかったよねー。これはゆくゆくは君のためになるし、これで良かったと思うことになるんだよ。だからふたり仲よくしてね~」みたいなことを言って、一方的な言い分で「これはあなたのためだから」を押しつけてくるのである。

 そこに人間のエゴを見る。

 それは設楽のためではなくて、ただ単にあなたが新しい犬が欲しくなっただけでしょ?

 と、自分でも信じられないくらい、そのシーンで不快になった私。理由は不明。

 よく「お前も一匹じゃ寂しいだろうから、兄弟がいた方がいいだろ?」と新しくペットを増やす場面が現実でもフィクションの世界でも見受けられるが、寂しいかどうかなんて、そのペットの生育歴によるのではないかと思うのである。最初から一匹しか飼ってなかったら、寂しいもクソもないのでは? 

 幸せを知らなければ、自分が不幸であることに気づかない――そんなものである(知ったような口調)。

 私は幼少期、自分の家が貧乏であることを知らなかったので、誕生日にケーキが出ないことになんの不満も抱かなかった。なぜなら、誕生日にケーキを食べたことがなかったからである。他の家ではバースデーケーキなる制度があることは知識としては知っていたが、自分の家で一度として食べたことはなかったので、別にそれに対して不満など抱かなかったのである。なぜなら、その「味」を知らなかったからだ。人は、今まで得ていたものを失ったとき、あるいはもう手にすることができなくなったとき、不満を抱くのである(犬の話だけど)。

 何が言いたいかというと、ペットを増やしたのは飼い主の希望であり、決してペット自身が望んだことではないということである。だから、「じゃあ二人で仲よくしてね~」なんて軽い調子で共生を押しつけるのは、飼い主のエゴである、ということが言いたい。

 そこでムカついちゃったから、残り全部、なんだか乗れなかった次第である。

 また、主人公の二匹の犬も、あまり性格が良いとは言えなくて、好きになれなかったのも実に痛い。特に設楽の方は、よくよく考えると良いところが一つもないと言ってもよい。。日村の方が、最初こそ設楽に辛く当たりはしたが、それは設楽から仕掛けてきたことでもあるし、何よりそんな目に遭わせてきた相手を特にこれといった理由もなく突然助け始めるのだから、とても良い奴に見えた。まあそれも、設楽と比べると相対的には良いといった程度で、取りわけ良いわけでもないのだが。。。

 主人公のことが好きになれないと、あるいは共感できないと、映画というものは楽しめないのだな~とぼんやり考えているうちに映画は終わった。

 というように、いまいち乗り切れなかった作品なのだが、そもそもこれを鑑賞したのは、本編前のミニオンのショートムービーが観たかったからなので、別に良いのである。ミニオンのショートムービーも大して面白くなかったけど、ミニオンは可愛ければ、それでよいのである。ミニオンであれば良いのである。ミニオン、ラブ(30過ぎのおっさんの台詞)。