★★★★☆
暗黒面とは、息子の終わらない反抗期のことである。という話。
私は『スター・ウォーズ』を全く愛していない人間である。エピソードⅠ~Ⅵまでぶっ通しで鑑賞した結果、散々文句ばかり言い連ねてしまった。もしも『スター・ウォーズ』関連の秘密結社があるのなら、殺されても文句は言えないくらいである(言うけど)。
でも観た。スーツをイオンのクリーニング屋さんに出しに行ったついでに観た。「せっかくイオンに来たなら、どうせならなんか観なきゃ」という強迫観念が私を映画館へと向かわせた。『スター・ウォーズ』を観たくなかったわけではない。映画を観たくなかったのである。年の瀬になり、心がわびしさの最高潮になる時期。「時間に追われる」という慣用表現があるが、私の心境としては、時間に追われるどころか追い抜かれて一人取り残されているような感覚なのであった。
私はひとりぼっち。
そんなときに映画を観るなんて、日々膨張する宇宙よりもわびしさを膨張させるようなものなのである(映画ブロガーには向いていない発言)。
しかも、時間的に本作しかすぐに観られるものがなかった。正直『スター・ウォーズ』かよ……と思いながらチケットを購入した失礼千万な客であった。ルーカス・フィルム側も、そんな鬱々したおっさんにお願いしてまで観て欲しくはなかっただろう。観てやったけど。
で。
結構面白かったよ! という着地。
期待値が低かったのが良かったのかもしれないが、少なくても今まで観た『スター・ウォーズ』の中で一番面白かった。最も安心して観られた一番のポイントは、敵の頭が良かったという点である。それなりにだけど。
私の『スター・ウォーズ』シリーズの最大の不満点は、敵が弱いことである。頭が悪いのもあるのだが、とにかく全身白い鎧に覆われた軍隊がひのきのぼうと石で立ち向かってくる原住民にいいようにやられる脆弱さに観ていてイライラしてしまったのである。
で、今回の敵「ファースト・オーダー」は、村人をきちんと皆殺しにするという点で、今までとは違う素晴らしい悪役であった。いままでの悪役なら、皆殺しにしようとした瞬間、何らかの反撃(しかもショボい)を食らってなんだかんだで撃退されていただろう。しかし、今回は村人大虐殺であった。そのシーンを観た瞬間、新ダースベーダー的な人にはぜひ最悪の死を遂げてほしいと切に願った。そういった安心・安定の悪役として敵が立っていたことに、本当に安堵したのである。
悪がいてこそ成り立つのが、正義である。悪が立たずば、正義はただの弱い者いじめと化す。
内容としては、『Ⅰ』~『Ⅲ』は観ていなくてもまあいいかなーという感じだが、『Ⅲ』~『Ⅵ』は観ておく方がより楽しめるだろう。少なくても最近ゴルフ場へ奇跡の不時着をして文字通り「帰ってきたぜ」が決め台詞となったハリソン・フォードこと「ハン・ソロ」がわからないと、面白さは半減どころか激減だろう。レイア姫は昔から全然可愛くなかったのがすっかりおばあちゃんになって腰が曲がり(でも今の方が可愛いかも)、旧三部作の主人公ルークは伝説のデュエリスト武藤遊戯くらい神話化しており(『遊戯王』より)、それらの話がわからないと「この人達なにやってんの?」と、ただCGによる爆発を楽しむだけの映画となってしまうだろう。それでもそれなりに面白いとは思うが。
ストーリーとしては、相変わらず冒頭1分程度の宇宙を流れる字幕で「宇宙は実はあんまり平和になってないよー。だからルークを探してるよー」というようなことが解説され、村人の虐殺から始まり、ルークの居所を記した地図を持ってそこから逃げたBB-8というドロイドをみんなが追う話である。このBB-8が、文句なくかわいい。我が家にも一台欲しいと誰もが思うことだろう。R2D2より欲しい。
主人公が本作から女性にスイッチしたのだが、この人がなかなか美人で良かった。『スター・ウォーズ』シリーズはレイア姫のせいでどうしても「女性がかわいくないのでは?」という疑いの目で観てしまうのだが、可愛くないのはレイア姫だけである(ひどい言い草)。
また本作では、敵から裏切り者が出てそいつが主人公級の活躍をする。そして、その裏切り者を許さん! とその辺にいた一ザコにしか過ぎない兵隊がトンファーのような武器でライトセーバーを持つ裏切り者に立ち向かってきたり、その兵隊達は実は幼い頃に誘拐されて戦闘教育を施されたという昨今の国際テロ組織を意識したような設定であったり、なかなか熱い展開があった。
しかしながら、まがりなりにも全作を鑑賞している私がいまもってよくわからないのが「フォース」のことである。この「フォース」というものは、ただ単純に観たものを解釈すると、「離れている物を自分のところに引き寄せる力」程度のものというか、いわゆる「念力(テレキネシス)」とあんまり変わらないように見える(本作では人を操るような場面もあったけど)。
それってすごいのか? いや、すごいけどさ。と思うのである。
本シリーズを全く観たことがなかった私が鑑賞当初一番びっくりしたのは、別にジェダイじゃないくても――つまり「フォース」がなくても「ライトセーバー」を使えるという点であった。私はてっきり、あの光の剣は「フォース」のそのパワーで出てくるものだと思っていた。しかし、ジェダイでなくても当然のように使えっていたし、それどころかあの光の剣を出すにはスイッチを押すだけであった。しかも斬り合いの最中うっかりもう一度押してしまいそうな位置にスイッチがあり、長い歴史の中、誤押しで剣が消えて斬られちゃった奴が絶対にいるはずである。
理屈でいえば、ライトセーバーでの闘いは、「フォース」云々というよりも、剣道が強い方が勝つのである。では、「フォース」の偉大さとはなんなのか。
誰か詳しい方、教えてください。
さて、最後に備忘録的にあらすじを書くと、帝国が滅びてもなんだかんだで悪が栄えており、30年後もやっぱりなにかと宇宙はピンチで、ルークが行方不明でドロイドがその居所を示す地図を持って敵から逃げて女主人公と出会って、ハン・ソロが出てきてレイア姫が出てきて敵の新ダースベーダー的な奴は二人の息子であることが発覚してなんだかんだとドンパチやってハン・ソロがあれま~となって最後は女主人公が「フォース」に覚醒したっぽくなって年老いたルークに会いにいったところで終わったが、次作ではきっとまた字幕でささっと説明して10年後くらいに飛ぶんだろうな~という感じであった。あらすじを見直すと、構成は旧三部作の始まり『Ⅳ』とほとんど同じであることがわかる。
観て損はない。普通のシネコンで鑑賞したのだが、劇場側も普段より音量を大きめにするほどの気合の入れよう。4DXでもないのに爆発音で座席が振動した。素晴らしい。