ゴーン・ガール | 映画物語(栄華物語のもじり)

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「映画好き」ではない人間が綴る映画ブログ。
読書の方が好き。
満点は★5。
茶平工業製記念メダルの図鑑完成を目指す果てしなき旅路。




★★★☆☆

 結婚なんてやめとけよ、というデヴィット・フィンチャー監督からのちょっと強めのメッセージの話。




 デヴィット・フィンチャー監督といえば『セブン』や『ファイト・クラブ』『ソーシャル・ネットワーク』あたりが有名である。私は、世間的に評価の高い『セブン』は全く無理で、この中であったら『ソーシャル・ネットワーク』をおすすめする。『セブン』は中学生のとき鑑賞して、ラストシーンは賛否両論の「否」であるのだが、強い印象を植えつけられた作品として心には残っている。足の裏に付いた米粒のようなしこりが。

 さて、本作はそのデヴィット・フィンチャー節がやはり炸裂していて、とにもかくにも暗い。暗過ぎる。この作品を観てハッピーになろうとする人なんていないだろうが、その覚悟を上回るほど暗い。気分が沈んでいるときに観ると、海底二万マイルもびっくりなほど海よりも深く沈みこむことだろう。世間での評判は一概に高く、ミステリーも好きなのでかなり期待して鑑賞したのだが、その暗さを後に引きずるほどの影響を受けた。クリスマスイヴに。よくなかった、これはよくなかったよ~(魂の叫び)

 失踪した奥さんの行方を捜す旦那サイドと、その旦那を容疑者として疑う警察サイドを交互に見せて物語は進行していくのだが、途中からここにもう一つの視点が加わる。まあ、これは正直かなり予想通りだったのだが、予想外だったのはここからが非常に長く、言ってみればここからが本番だった点である。ここからが本番であり、ここからが怖かった。怖いといっても別にホラー映画のような怖さではないので一人で観ても平気なのだが、なんかもう、世の中嫌なことばっかりで嫌になっちゃうわ~という「うんざり」「げんなり」する怖さで、だんだん観るのがしんどくなっていった。

 ここからは上記以上にネタバレを含むが、邦題の『ゴーン・ガール』は直訳すれば「失踪した少女」ということになるのだろうが、失踪した奥さんはどう贔屓目に見ても「少女」と呼ぶにはかなり厳しい年齢である。というと、「女はいつまでだって少女なのよ!」という反論が聞こえてきそうだが、まさにその通りなのである。奥さんはまるで少女のように、いろいろなものを欲する。その手段は知的であるが、子供っぽい。子供の情緒で大人の知性を駆使したらこんな感じになるのかなぁ、という狂気を、主演女優は見事に怪演している。もうそれが観ていて辛くて辛くて、おじさんはげんなりしてしまったのである。その子供っぽさは、旦那をハメる手腕の数々は見事な反面、自らが意外と単純にピンチに陥るところにも見て取れる。ミステリーによくある知的な犯人の手際のよさとは一線を画す「トロさ」があるのである。そこにもイライライライラしてしまい、要するに私には性に合わなかった作品なのである。そこがよいという人も大勢いるのだろうけどね!

 そんなわけなので、デヴィット・フィンチャー監督のファンの人にはまさに「フィンチャー節」が炸裂している本作はオススメであるが、私のように、映画には基本的に「幸せな時間」を求めるタイプには、鑑賞後その日1日を棒に振るほどの暗い気持ちを提供してくれる作品となっている。私はやはり、ハッピーな映画が好きだね~