タクティクスアドバンス刑事訴訟法2015(年の刑訴法に基づく)復元~概論~ YHVHデータベース | Great Materia大学院 jurispredence(法理学科)法曹(弁護人・法学検定上級)短期養成講座

1.刑事訴訟法とは ~学習にあたって~

 

 刑罰法規の規定に該当する犯罪がなされたか否かについては,所定の手続・方式に基づいて,裁判所の判断が示されなければならない。そのための手続を刑事手続あるいは刑事訴訟という。もっとも,刑事訴訟といっても,裁判所における手続だけではなく,捜査の手続も重要な課題であるし,さらには.刑事手続のみを念頭においたものではない警察の諸活動(たとえば,職務質問)を規律する領域や,少年の健全育成を目的とする少年法の領域も.刑事手続に密接に関連するものとして,学習の対象に含める必要がある。
 刑事手続に関する法源として, 

①日本国憲法(とりわけ. 31条から40 条までの規定). 

②刑事訴訟法, 

③裁判員の参加する刑事裁判に関する法律,

警察官職務執行法,

犯罪捜査のための通信傍受に関する法律,

少年法その他の関連する諸法律の規定中,

教科書等で言及されている条文, 

④刑事訴訟規則の各規定について,十分習熟する必要がある。

刑事訴訟法の初学者は.往々にして,個々の条文の学習を着実に積み重ねるのではなく.手つ取り早い問題解決法のようなものに頼り,たとえば,「真実発見と適正手続の調和の見地」であるとか.「必要性,緊急性,相当性」であるとかの文言を安易に用いがちである。しかし.それは,あたか も,民法の条文をこっこつ検討することを怠り.すべてを「信義誠実の原則」なり「公序良俗」なりで片付けようとする学習態度のようなもの

である。刑事訴訟法の学習者は,まず.個々の条文をつねに参照して, それらがどのように機能しているのか着実に理解する試みを積み重ねていかなければならない。もっとも,刑事訴訟法の条文は500ヵ条を超え.刑事訴訟規則のそれは300カ条を超える。それらすべてについて緻密な検討をする時間や労力は.もちろん必要ではない。代表的な教科書等で言及されている条文をその都度参照すればよいのである(きわめて当然の方法であるが.ある程度学習が進んでいる人でも.この点がいささか不十分だと感じられることがある)。本書を手にしている学習者は,その点の意識があるはずであるから.実際に本書を利用しながら,関係条文をチェックするようにしていただきたい。
刑事訴訟法(ここでは.地事手続を規律する法領域という意味ではなく, 「刑事訴訟法」という名前の法典のこと)は.旧刑事訴訟法(以下.旧法という)の内容を一新したものであるが.限られた時間内に迅速な改正手続が必要だったこともあり.旧法の編別構成をほぼ踏襲した。それは, 論理的体系性を持つものといえるが.反面.手続の順序に必ずしも従っていないし,個別の問題の理解のために総則の規定と個別の手続に関する規定とを見なければいけないことにもなる。さらに,旧法では職権主義が妥当していたので,裁判所の権限(あるいは責務)を中心として総則の規定を編成し捜査機関の権限は,各則のほうで一定の場合にそのうちの一部を準用するという体裁をとることに合理性があった。現行法は,規定の配列において基本的にこれを踏襲したので.222条1項で相当数の条文が準用される体裁になっている。これがはたして立法形式として適切なものなのかはさておき,学習者は,このような編別構成を所与のものとして条文の配置に目配りすることが必要である。
 判例について一言しておこう。これについては,学習者のためにきわめて有益な情報がすでに示されている(さしあたり,龍岡資晃「刑事訴訟法判例の意義と機能」井上正仁=酒巻匡編「刑事訴訟法の争.〔有斐閣, 2013 年〕8頁およびそこで引用されている文献参照)。蛇足ではあるが,  刑事訴訟法に関する判例の性質として要注意だと思われる事項を述べておきたい。まず1つは.刑事訟法判例には,通常の手続ではなく,何らかの特殊な事態があったために(たとえば.捜査機関の措置に遣漏があっ

たとき,または手続が異例な経過をたどってしまっつたとき) ,何らかの対策を施す必要がある(あるいは,場合によっては後始末をつける)といった性質のものが存在することである。 判例となったその事案の手続がどういう経過をたどったのかについて, 慎重に見ておく必要がある。 もう 1つは, 事例的な判断を示した判例の取扱いである。 たとえば, 令状により差し押えようとするフロッピーディスクの中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において, そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは,その内容を確認することなしに当該フロッピーディスクを差し押さえることが許されるとした最高裁判例がある(最決平10・5・1刑集52・4・275 )。このような判断については,その理論的根拠をしつかり把握するように努めなければならない。上述のいずれのタイプの判例であっても,判示の「結論」を暗記しただけでは,その判例を理解したことにならないので,しかるべき文献なり受講中の講義なりを通じて,学習を進めることをお勧めしたい。


2刑事訴訟法の概観ーーー一手続の流れに沿って
以下,各項目における学習のすすめ方について述べる。
( 1 )刑事訴訟法序論
この領域は,刑事訴訟法の意義,

基本原理および手続の流れ,

手続の関学者などのテーマからなる。

いずれも,刑事手続全体を見渡す視点が必要であるので,刑事手続を学ぶ出発点として位置づけられるが,同時にまた,手続全体を学んだ上で整理・確認することにもなるから,学習のゴールでもある。このように,やや矛盾した表現になってしまうところであるから,実践的には,まずレベル☆の問題にチャレンジし, ル☆ ☆およびレベル☆☆☆の問題は,本書の仕上げに活用するというのも一方法であろう。

 

( 2 )捜査
( a )捜査機関
検察官,検察事務官,司法警察職員を総称して,捜査機関という。

司法警察職員の区分として, 

①一般司法警察職員と特別司法警察職員, 

② 司法警察員と司法巡査がある(①と②は,区分の基準が異なる。論理的には4通りになる)。

検察官と司法警察職員は,別組織であるから,基本的に協力する関係にあるが,一定の基準に従って,指示・指揮の関係がある。

刑事訴訟法189条以下の関係規定を参照すること。なお,同法39条3項本文にも,定義規定がカッコ書で示されている。 
(b)搜査の端緒
犯罪捜査を開始するきっかけのことを捜査の端緒という。何が捜査の端緒になりうるかについて,刑事訴訟法には特に制限する規定はない (同法189条2項は,「犯罪があると思料するとき」と規定している)。もっとも,刑事訴訟法に定められた一定の手続が捜査の端緒になることはある。それらを列挙すると, 

①現行犯(刑訴212条以下) , 

②検視(刑訴229条) , 

③告訴・告発・請求(刑訴230条以下) , 

④自首(刑訴245条)である。

それぞれの要件,手続を整理しておくとよい(だれが,どういうときに,何をするのか。その効果は,どういうものか)。とりわけ, ③告訴・告発・請求は,条文がやや入り組んでいるので,教科書等で主要条文をチェックするとともに,公訴提起の領域とリンクさせて学習をする必要がある。刑事訴訟法の規定以外で重要なものとしては,

警察官職務執行法2条が定める職務質問がある。これは,犯罪捜査そのものではなく, 犯罪の予防・鎮圧を目的とする警察活動であるが,事柄の性質上,犯人の発見・確保および証拠の収集・保全という捜査活動へと流動的に移行することが多い。したがって,同法の定める要件・手続を確認するとともに,関連判例を学習しておくとよい。その際.職務質問に付随する所持品検査,交通違反検挙を目的とする自動車検問などについても目配りが必要である。
(c)任意処分と強制処分
刑事訴訟法197条1項ただし書は.いわゆる強制処分法定主義を定めている。どのような捜査上の処分が強制処分にあたるのかについて.直

接定義した規定はみあたらない。最高判所の判例は任意取調べの途中で退出しようとした被疑者に対して警察官が有形力を行使した事案について,強制処分とは,個人の意思を制圧し,身体,住居.財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など,特別の根拠規定を要する処分をいう旨判示した(最決昭51・3・16刑集30・2・187 )。このうち何が本質的な区分指標であるのか.また有形力行使以外の事案ではどのように適用・判断すべきであるのかについて.判例百選等の文献で確認しておくとよい。また.同判例は前記のような有形力行使の事案において,強制処分に該当しない処分(すなわち.任意処分)の適法性を判断する基準をも判示した。その判断方式についても学習しておくことが必要である。

( d )令状主義
令状主義とは.強制処分の実施について.これを捜査機関限りの判断にゆだねず,中立な立場にある裁判官の審査を経由させることにより, 不当な人権侵害の抑止をはかる制度である。憲法33条・35条がこれを要求しているとともに.一定の例外を許容している。これをうけて,刑事訴訟法は. 逮捕・捜索・押収・検証等の処分について,また通信傍受法は.通信傍受について.それぞれ所定の令状を要している。令状を要求する趣旨.例外にあたる場合について,要件・手続を整理しておく必要がある。 
(e)逮捕・勾留・取調べ 
この領域は.刑事訴訟法の学習の上で最も重要なものの1つである。学習の対象としては.主として. ①条文の内容や趣旨から,それぞれの要件・手続が理解できるものと, ②それらの理解を前提に総合的な判断が必要となるものとに分けることができる。

①については,刑事訴訟法 1条以下の関係規定から.要件・手続を整理・確認しておく必要がある(特に,だれにその権限があるかということに着目すること)。

なお,取調べは.その対象により,同法1条・条に分けて規定されている。

②については.逮捕前置主義、事件単位の原則,同一事件による再逮捕. -ー罪ー勾留の原則.別件逮捕といった諸事項にいて.その意味内容と相互の関係について.具体的な事例を念頭によく理解しておかなけ

ればならない。
(f)捜索.差押え.検証.鑑定
この領域もまた.刑訴法の学習のうえで最も重要なものの1つである,令状主義と関連づけて,刑訴法218条の要件・手続と,刑訴法220条(とりわけ.一項2号・3項)の要件・手続とを整理・理解しておく必要がある。また.同法222条1項が相当数の条文を準用していることは前述のとおりであるので.これも整理・確認しておかなければならない、準用されない条文もあるので.なぜ準用がないのかについても考えておくこと) ,なお.初学者は、捜索・差押えを一括して覚えこもうとして.理解が湜乱する場合もあるので.要注意である。たとえば,「捜索差押えの対象」という言い方で一括して議論をするとすれば,それは適切ではない。どこまで捜索が及ぶのかは「捜索の範囲」の問題であり, 発見された物のうち何を差し押さえてよいのかは「差押えの対象」の問題である。
(g)通信傍受 
さしあたり検討しておくべきであるのは.刑事訴訟法222条の2 ,通信傍受法2条から4条まで9条から14条まで, 19条.23条,26条, 別表である。なお,ー別表の各条項を覚える必要などは.もちろんない。カテゴライズして,薬物犯罪,銃器犯罪.集団密航.組織的殺人の4つとしておけば十分である。  
(f)捜査の限界
この領域では,写真撮影(ビデオ撮影, X線撮影などを含む) ,おとり捜査,強制採尿について,主要判例の内容を点検しておかなければならない。比較的新しく言い渡された最高裁判が存在するので,判例百選などで確認しておくとよい。
( i )被疑者の防御
主要な対象は,黙秘権

弁護人依頼権である。

まず憲法34条前段,  37条3項,38条1項を確認しておくこと。さらに,弁護人依頼権のうち接見交通は重要な制度であるから.刑事訴訟法39条の要件・手続を理解しておく必要がある。また.最大判平11・3・24民集53・3・514の理解は必須である。

( j )操作の終結     
刑事訴訟法246条の要件・手続を確認するとともに,「特別の定」あるいはこれと同様の効果のある手続を整理しておくとよい。主要なものを列挙すると,刑事訴訟法203条,211条、216条, 242条, 245条,少年法41条である。少年事件については.罰金以下の刑にあたる罪については刑事処分がないので.家庭裁判所に直接送致することになる。
 ( 3 )公訴の提起 
( a)公訴提起の諸原則
国家訴追主義および起訴独占主義(刑訴247条) ,起訴便宜主義(刑訴 248条) ,不告不理の原則(刑訴249条) ,起訴状一本主義(刑訴256条6 項)の意義を理解しておくこと。起訴独占主義には,一例外として, ①付審判決定(刑266条2号) , ②検察審査会の起訴議決に基づく指定弁護士の基礎(検審41条の10 )があるので.それらの要件・手続を整理しておくとよい。また.起訴便宜主義の対概念は,起訴法定主義である。
( b)公訴提起の要件
たとえば,被疑事件について公訴時効が完成すれば起訴することができず,仮に起訴があっても刑事訴訟法337条4号により免訴判決で終局し,また,被疑者が死亡していれば起訴することができず,仮に起訴があっても同法9条1項4号により公訴棄却決定で終局する。このように,起訴の条件と同法337条以下の規定を関連づけて理解するとよい。公訴時効に関しては,その存在理由,要件(公訴時効の期間および起算点)について,主要判例も含めて検討しておく必要がある。なお,判例によれば.同法253条1項の「犯罪行為」とは,刑法各本条所定の結果を含む(最決昭63年・2・29刑集42・2・314 )。
(c)公訴提起の手続
この領域で最も重要な規定は.刑事訴訟法256条である。その記載事項は完全に理解しておく必要がある。とりわけ,訴因の明示・特定については,同条3項の立法趣旨.主要判例の判示も含めて検討しておかなければならない。

 

(4 )公判

( a )公判廷の構成,公判手続の進行,公判における個別問題,簡易な手続

この領域では,まずもって.関係する条文をしつかり点検することが必要であり,同時にまた,それで十分である場合も多い。したがって, 誤解を恐れずに述べれば.本書の活用だけで十分な効果が上がる領域であるといえる。ただし,単調な条文暗記と問題練習の繰り返しに陥りやすいともいえるので.手続の関与者が,どの段階で,何のためにその手続をしているのか,イメージできるようにするのがよい。ルールの塊ではなく,人間の営為として興味や関心がわけば,記憶や理解が定着することにつながる。そのための一方法として,法廷傍聴をすることを考慮してもよいであろう。

( b )訴因変更
刑事訴訟法312条は,最も重要な条文の1つである。現行法の基本構造や特色があらわれているからである。したがって,基本原理とリンクさせて,事例の分析や検討をしておくことが有益である。なお,初学者は,「訴因変更の可否」と「訴因変更の要否」について混同することがあるので,要点を述べておく。訴因変更の可否とは,検察官が起訴したこの被告事件において,審理の途中で検察官が自らの主張である訴因を変更して,変更前と同一の手続内で裁判所に事件の審理をしてもらえるかどうかの話である。たとえば,被害者から高価な宝飾品を騙し取った事実であるとして起訴された事件の審理の途中で,被害者から預かっていた当該宝飾品を無断で第三者に売却したという事実に,検察官が主張を変更することができるかということである。同一事件といえれば主張を変更することができる(すなわち.訴因変更が可能である。その反面,別途改めて起訴することはできない)が,別事件であるのならば主張の変更はできない(すなわち,訴因変更が否定される。そのかわりに,別途起訴してよい)ことになる。その可否の判断基準は.「公訴事実の同一性」である。これに対して,「訴因変更の要否」とは,裁判所が審理の結果,検察官が主張するシナリオとはやや異なる形で有罪判決を言い渡すに至る場合において,その違いを判決に至る前の一定の段階で被告人に示す措置をとり,十分に防御の機会を与える必要があるのか,それともそのよう

な防御の機会を考慮することは不要であるかの話である。たとえば,検察官が,タクシーの乗客を装った上でタクシー乗務員の反抗を抑圧するに足りる暴行を加えて売上金を強奪したとして起訴した事案において, 裁判所が.タクシーの乗客を装。た上でタクシー乗務員を殴打して畏怖させて売上金を喝取したと認定して有罪判決に至る場合,審理の途中のある特定の時点で検察官がシナリオを整理しなおすように裁判所が一定の措置をとる必要がある(すなわち.訴因変更が必要である)のに,それをせずに卒然と有罪判決を言い渡せば,その審理手続は防御の機会を奪う不意打ちであって違法であるが.そのような措置をとる必要がない (すなわち,訴因変更が不要である)ならば,裁判所が有罪判決を言い渡した審理手続に違法はないということである。その基準については,判例上,種々の議論がある。
( 5 )証拠法
( a )証拠法総論
この領域では,関係条文は.刑事訴訟法317条, 318条の2か条しかない。しかし,理論や判例により.多くの帰結が導かれている。概念が混乱しやすい領域であるので,証拠能力と証明カ,関連性,証拠の種類,厳格な証明と自由な証明,経験則,公知の事実,挙証責任,推定, 証明の水準などの諸概念について,整理しておく必要がある。
( b )自白
自白に関する条文は, 憲法38条2項・3項, 刑事訴訟法319条である。証拠能力に関する部分は自白法則,証明力に関する部分は補強法則とよばれることがある。自白の証拠能力が制限される根拠,主要判例の事実
関係と判旨を整理しておくことが必要である。 一方, 補強法則については,その趣旨,補強証拠適格.補強の範囲と程度,いわゆる共犯者の自白と補強証拠の要否などを検討すれば十分であろう。
(c)伝聞証拠
この領域は.訟法の学習のうえで最も重要なものの1つである。また初学者のみならす相当程度学習が進んだ者にとっても,理解があやふやになりやすい分野である。しかし,伝聞法則も人間の経験的
な知恵の産物であるわけだから,具体的なイメージをもちながら学習することが重要であろう。定型的な言葉の暗記に頼ると袋小路に閉じ込められやすいので,要注意である。基本的には, 

①どのような事実の推論に使うのか, 

②誰の体験談として取り扱うのか

の2点について,

しっつかりイメージできれば,大きな誤解は生じないはずである。学習にあたっては, 

③刑事訴訟法320条1項が適用されないもの(非伝聞といえるもの)について,具体例とその根拠がいえること, 

④同条項が適用されるが,同法321条から328条までの規定により,その証拠能力が肯定されるもの(伝聞例外にあたるもの)について,条文構成の論理,判断の順序,具体的な適用結果について,十分に習熟する必要がある。さらに, 関連領域として, 

⑤現場写真の証拠能力,写しの証拠能力なども検討対象にしておかなければならない。
( d )違法収集証拠
この領域では,最判昭53・9・7刑集32・6・1672の検討が必須である。判例百選などで学習しておくことが必要である。ただし,それだけでは十分ではない。関係する最高裁判例がその後も数件出ている領域であるので,それらの事案の内容や判旨について勉強するとともに,理論的背景にも目配りしておく必要がある。


( 6 )裁判
この領域でも, ①条文の理解だけで十分といえるものと, 

②理論や判例の内容までに立ち入った検討を要するものとがある。

まず, ①については,条文の数も少ないし一応目を通しておくことにさほどの困難はないはずである(さらに,刑事訴訟法9条以下の規定は,その必要すらないともいえる)。

②については,択一的認定,形式裁判の拘束力,ー事不再理の効力などについて,判例百選などを教材として十分に検討しておく必要がある。 


( 7 )上訴,再審,略式手続,少年手続
これらについては,条文の理解だけでほば十分である。ただし,控訴審における新証拠の取扱い,上きと攻防対象論については,判例の事案
と判旨を理解していなければならない。少年法の関係条文としては.さしあたり。3条,20条. 41条、45条5号、48条. 51条, 52条に目を通' しておくことが必要であろう。少年法は一読しただけではその手続をイメージしにくいので,しつかりと学習するには刑事政策の教科書等により関係部分を読んでおくとよいが.刑事訴訟法の学習のために最低限知っておかなければならないのは.前記の各条項である。


【刑事訴訟の流れ】

 

コメント:この表を覚えておけばいい。あとは問題演習を7回以上していって、7回目も間違うようなことをここまでの概論に書き込んでいけばいい。大体、この概論だけで司法試験の問題は解けてしまうから。

刑訴法は、手続きの問題なので、簡単なのだ。

何が大事かというと(7)の略式だな。略式になるような話だったら、略式でいくといい。正式な裁判にすると、裁判官も出てきてるのだからと思って重くされるからだ。早く出れるなら早く出たほうがいいから、前科がつくとか、そういうことはどうでもいいから略式で早く出たほうがいい。

略式とは、公判 を行わず簡易な方法による 刑事裁判 の手続きだ。

100万円以下の罰金又は科料の場合、検察官が調べのときに「略式でいいですか?」と聞いてきたら、「略式にして」と言ったら、金を払ってすぐ出れるから。

略式請求は、刑事訴訟法461条~470条に規定された手続きで、簡易裁判所が、その管轄する事件について、検察官の請求 により、公判手続を経ないで、検察官が提出した証拠のみを審査して、100万円以下の罰金又は科料を科す簡易な裁判手続だ。

刑事裁判は、短いものであっても1~2ヶ月、長いものであれば数年、十数年と続くこともあり、被疑者(被告人)の 負担も重いものがある。
そこで、
①生命・自由に対する刑罰を科するものではないこと、
②公判手続に比べて必ずしも被告人の利益を害するものとはいえないこと、
③正式裁判の請求により公開裁判を求めることができることなどから、このような略式手続が認められています。

黙秘権と略式が実務では大事だ。

何で日本の刑訴法をとりあげているかというと、刑事訴訟法においては、世界中で共通する原則や国際的な基準が存在し、国際的に共有されている原則には、被告人の権利、公正な裁判、拷問や不当な取り調べの禁止、公平な弁護の権利などが含まる。これらの原則は、例えば国際的な人権規約や国際的な刑事司法の文脈で重視されているから、日本の刑訴法をやっておけば、どこの国でも大体同じなのだ。

違いとしては、陪審員制度があったり、傍聴ができなかったり、捜査権限の主体が検察官か警察官の違いかとか、弁護士がどの段階で認められているかとか(いらんし、こんなもん)、証拠の採用基準や取得手段(これはその国の弁護士にとっては大事なことだが、黙秘しておけばいいことは変わらないし)、拷問や自白の取り扱いや、刑罰の種類も違うけど、和解(示談)で訴訟解決が認められている国もある。

こういう細かい違いはあるが、国際的に裁判は、一般的な法的手続きの原則が共有されている。

 

国際的な法的手続きの基本的な原則としては以下。

  1. 公正な裁判:

    ・裁判は公正かつ公平であるべきとされていり。これには中立的で公正な裁判官、弁護人の存在、証拠の公正な取り扱いが含まれている。
  2. 被告人の権利:

    ・被告人には様々な権利が保障されている。例えば、黙秘の権利、適切な弁護の権利、不法な捜査や取り調べからの保護など。
  3. 法的通知と公開審理:

    ・被告人は告発事実を事前に知る権利があり、裁判の公開審理が行われるべきとされている。
  4. 罪刑法定主義:

    ・罪と罰は法律に基づいて定められるべきであり、法律の下での平等が確保されるべきとされている。
だから、日本の刑訴法を勉強しておけば、無駄にはならん。
そして、刑訴法は、手続法だから、行政書士の勉強に近い。行政書士の資格試験に合格した人は、まず刑訴法から学習することをすすめる。